『野球帽大図鑑』を手に笑顔で帽子への思いを語る綱島さん。野球の話になると時間を忘れて夢中になってしまうという(撮影/加藤夏子)
『野球帽大図鑑』を手に笑顔で帽子への思いを語る綱島さん。野球の話になると時間を忘れて夢中になってしまうという(撮影/加藤夏子)

 プロ野球チームの復刻ユニフォームを監修するなど、日本を代表する野球意匠学研究家である綱島理友(つなしま・りとも)さん。その綱島さんが心血を注いだ新刊、野球帽の歴史とその変遷をまとめた書籍『野球帽大図鑑』が話題となっている。戦前から2020年現在までにプロ野球で使用された帽子、約700点をカラーイラストと解説文で徹底紹介した奇跡の一冊。著者の綱島さんとイラストを担当したイワヰマサタカさんにこだわりの野球帽をうかがった。

【写真】綱島さんがベストデザインに選んだ西鉄ライオンズのNLマーク

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■プロ野球チーム愛は勝ち負け以外のところで育まれる

 小学校3年生から大洋ホエールズのファンになった綱島さん。当時かぶっていたのは1963年に1年だけ採用された、赤いTのマークを白で縁取ったデザインの帽子だった。60年に日本一に輝いた大洋。60年代前半は優勝争いに絡むこともあったが、その後は長く低迷を続ける。綱島さんは弱いチームを応援し続ける中で、「絶対優勝しないチームを応援する」というスタンスが確立されていったという。

「他球団のファンは勝利や優勝といったことを意識しながらひいきのチームを応援しますが、そういった期待ができなかった。そこで野球に対して別の見方が培われました。帽子やユニフォームといった、勝ち負け以外の部分に目が行くようになったんです」

 イラストを担当したイワヰさんも小学校の頃からの南海ホークスファン。綱島さんと同じような理由で子供のころから野球帽やユニフォームのデザインに興味を持っていたと話す。

「地元のチーム、身近なプロ球団ということで南海を応援していたんですが、その当時の南海は弱かったし、やはりセ・リーグに比べると当時のパ・リーグは人気がありませんでした」

 阪神ファンが圧倒的多数を占める大阪では少数派に属する南海ファン。イワヰ少年はいつしかグラウンド上の勝敗より選手が着用するユニフォームや帽子のデザインに魅かれていった。

「小学校の頃は配られたプリントの端に12球団の帽子マークの落書きをしていました。デザインに興味を持ちだしたきっかけは野球帽だったのかもしれません」

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イワヰさんが初めてかぶった帽子は?