1961年から1974年に使用されたYGマーク
1961年から1974年に使用されたYGマーク

「ところが帽子屋に大洋の帽子マークが売っていて、巨人の帽子のマークを外して大洋のマークを付け直してかぶっていたんです。帽子屋の引き出しには巨人以外の球団のマークがすべてそろっていました」

 こういった経験から野球帽や帽子マークに興味を持つようになった綱島さん。大学時代にはオークランド・アスレチックスなど、大リーグの帽子をかぶっていたという。最近ではブルックリン・トロリードジャース(ロサンゼルス・ドジャースの前身)の帽子がお気に入りだ。少年時代から常に身近にあった野球帽だが、今回の執筆にあたり帽子の歴史を調べていく中で、新たな発見もあった。

「野球の黎明期、19世紀のアメリカでは帽子は服飾の一部であり、外出時にこれをかぶることは一種のたしなみでありエチケットでした。当時の野球の試合を描いた木版画などを見ても、選手から観客にいたるまで帽子をかぶっている風景が描かれています。この時代の他のスポーツが描かれた版画や絵を見ても同様です。野球だけではなく、テニスもクリケットもゴルフも、そしてサッカーやラグビーといったフットボール系のスポーツに至るまで、帽子をかぶってプレーしていたのには驚きました」

 また、日本のプロ野球の帽子マークにも見比べないと気が付かない違いがあったという。

1993年から2005年までのもの
1993年から2005年までのもの

「巨人のYGマークは1954に登場した、日本のプロ野球を代表する意匠です。しかし、よく見ると時代に合わせて6種類のバリエーションが存在しています。また、ロッテオリオンズのLOマークも時代によって形が違います。これは前年のマークを見ながら次の年のマークを刺しゅうしていたため、徐々に形が変わっていったもの。意匠の管理が厳密になった現在では考えられないような理由でマークの形が経年変化してしまったようです」

 球団別の帽子を年代別にまとめたページでは、現在のプロ野球12球団に加え、100年前に日本で初めて結成されたプロチームや、職業野球チーム結成のきっかけとなった日米野球、わずか1年で消えたプロリーグなどの帽子まで網羅されている。野球とともに歩んできた野球帽の歴史を、開幕前にぜひ知ってほしい。