世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。

【写真】緊迫感… 暴徒に備える兵士たち

抗議集会に集まる人々。みな感染のリスクを承知で集まっているのだ(写真提供/Kevin Seo and David Martinez)
抗議集会に集まる人々。みな感染のリスクを承知で集まっているのだ(写真提供/Kevin Seo and David Martinez)

■ロックダウンから外出禁止令

 アメリカで先月、黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警察官に押さえつけられた後、そのまま亡くなった。これに抗議する集会が各地で起き、それが暴動に発展するということが全米で起きている。もはや収拾がつかない状況だ。

 この件を現地市民はどう見ているのか。ニューヨーク在住の友人は、

「アメリカのいろんな地域で暴動が起きまくってる。そこら中でデモがあって、いたるところで火が上がってる。まるで『リアル・ジョーカー』だよ」

 映画『ジョーカー』のクライマックスの暴動シーンを想起させるような映像は、世界中に配信されている。この事態は多くの人の知るところとなっているだろう。

 ロサンゼルスに住んでいる友人もこう話す。

「ロサンゼルスの暴動もヤバイです。遂に外出禁止令が出ました。外に出たら逮捕です」

 夜間外出禁止令がすでに25都市以上で出された。結果的に、新型コロナウイルスによるロックダウン以上の非常事態になっている。

 今回の事件の背景には長年の黒人差別があり、そこから“白人至上主義”が表面化した形だ。そして暴動は新型コロナで鬱積したストレスが爆発したとも取れる。さらに問題なのは、事件や差別への抗議とは別に、略奪に走る者たちがいることだ。それも、あえて白人をターゲットにしているという。前出のニューヨークの友人はこうも語る。

「高級デパートのガラスが壊されて侵入されたりしている。白人がオーナーだからだ。(ジョージさんが亡くなったのは)痛ましい事件ではあるけど、これはもう正義じゃない。暴動にお祭り感覚で参加しているやつもいて、間違った方向に向かっている感じは否めないよ」

暴徒に対して備える警備の兵士。平和に見える住宅街には異様な光景である(写真提供/Takuma Yari)
暴徒に対して備える警備の兵士。平和に見える住宅街には異様な光景である(写真提供/Takuma Yari)

 ほとんどのアメリカ人はこれまで“自粛”を続けてきた。それなのに、暴行事件をきっかけに、抑えが効かなくなった人が大量に溢れ出したのだ。ソーシャルディスタンスはどこへやら。もはやコロナについては諦めの境地に達しているようだ。

「コロナなんてもう忘れられている。これで感染拡大は避けられないかな」

 新型コロナウイルスの渦中、誰がこのような事態を予測していただろうか。今後も動きがあれば、お伝えしていきたい。(文/丸山ゴンザレス)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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