世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。

【写真】娯楽用の大麻がこちら

コロナ禍でも営業を続ける大麻販売店(写真提供/Hitoshi Saito @hitoshisaito_)
コロナ禍でも営業を続ける大麻販売店(写真提供/Hitoshi Saito @hitoshisaito_)

■ステイホームで変わった「大麻のポジション」

 コロナ禍で耳にするようになった言葉に「Essential Worker」(エッセンシャルワーカー)がある。我々の生活に不可欠な仕事をする人のことだ。医療従事者をはじめ、スーパーやドラッグストア、物流などの生活インフラなどがこれにあたる。そこで働く人たちには、ただただ感謝である。

 さて、今回はアメリカの生活に不可欠な仕事を紹介しよう。国家非常事態宣言の期間中、多くの店が休業した。営業を続けられたのは、前述のエッセンシャルワーカーの業界だけ。そのあたりは日本と同じである。興味深いのは、ロサンゼルスではそのなかに大麻(マリフアナ)の販売店も含まれていたことだ。

 大麻は医療用・娯楽用にわけられていて、ほとんどの販売店は両方を取り扱っている。アメリカでは大麻はストレス解消のみならず、痛み止めや睡眠導入などいろいろな医療用途で使われている。そのため生活に不可欠な業種として扱われているのだ。

 ちなみに医療用大麻を入手するには、許可証が必要である。医師から診断を受け、所定の手続きをすれば誰でも入手できるため、決してハードルの高いものではない。そもそもカリフォルニア州では娯楽用大麻も解禁されているので、成人なら誰でも(法律上はアメリカ国籍の人間のみ)買うことができる。

 大麻販売店の営業について、住人たちはどう思っているのか。ロサンゼルス在住の友人に聞いてみる。

「『マリファナの売店が不可欠』なんて言うと、日本人からすればジョークっぽいよね」

 どうやら現地の人にとっても、多少の違和感はあるようだ。ところが、この違和感の正体はもっと別のところにあるのだという。

「タバコを売っているスモークショップはエッセンシャル(不可欠)じゃないからお店が閉められていた。『タバコはダメでガンジャ(大麻の一種)はOKかよ』って感じです」

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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タバコは大麻よりも悪?