「4月にヨーロッパに行こうと思っていたが、当初の4倍に値段が跳ね上がっていてあきらめた。海外へのニーズがなくなって、これからは国内の取材が増えるのでは」(旅系ライター・30代)

「航空券の値段は間違いなく上がる。ただ、ホテルなどで値段が下がることもあるだろうから、滞在費をきりつめて、現地で長期間取材することで、トータルでお得にするしかない」(ベストセラー旅行記著者・40代)

 我々のように個人(フリーランス)で取材活動をする身としては、渡航費の値上がりは死活問題である。だが、困っているのは我々だけではない。

「里帰りの頻度が下がるよ」

 海外に住んでいる友人たちの声である。彼らはそろって日本へ戻れない危機感を口にした。旅費が高騰するからである。たとえばタイに暮らしている人たちは、タイにおける旧正月(4月13~15日)に行われる「ソンクラーン」(水掛け祭り)のタイミングで里帰りすることが多かった。この時期、私もタイと日本を移動したことがあるが、タイ国際航空で当時7~8万円ぐらいだった。これが2~4倍になったとしたら、帰国の頻度を下げなければならない人たちが出てくるだろう。大企業の駐在員ならいざしらず、現地の企業でギリギリの生活をしている人もいる。彼らが帰国するハードルがあがるということは、ひるがえって今後、日本から海外に出ていく人が減ることにも繋がりかねない。仮に航空費が高騰すれば、価格が落ち着くまでには数年はかかるのではないか。

 困難は続く。だからこそ、先行きを見通し、そのなかで何ができるかを考える必要があると改めて思った。(文/丸山ゴンザレス)

著者プロフィールを見る
丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

丸山ゴンザレスの記事一覧はこちら