ソウェトの取材で現地を訪れた丸山ゴンザレス
ソウェトの取材で現地を訪れた丸山ゴンザレス

「学校が襲われているって本当?」

「ああ、本当だよ」

 彼によると、これまでに200校以上が襲われ、パソコンや扉などが略奪されたという。「なぜ扉?」と思うだろうが、これらは建物の部品で使われたりするので、売れば金になるのだという。ニャイコはさらにすごいことを言い出した。

「犯人は学校を燃やすんだよ」

 学校を襲った連中は証拠隠滅のために放火していくのだという。その結果、校舎だけでなく教科書や文房具も燃え落ちてしまったということだ。

「なんでそんなことをするの?」

「犯罪でしかお金を得る手段がないからね」

 そのとおりなのだろうが、以前に南アフリカで取材したギャングや、薬物のバイヤーも、「違法だが、子どものために頑張っている」と言っていたことが引っかかる。犯罪者にも彼らなりの正義があると思っていた。それだけに、この放火の話は胸が痛い。

 もちろん私が取材した者たちと同じ連中が学校を襲っているとは限らないだろうが、追い込まれた人間の心理状態がいかに危険なものかを突きつけられた。あまりに理不尽な事件である。(文/丸山ゴンザレス)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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