Q 家紋の意匠(デザイン)には法則があるように見えるが…?

A 輪や角で囲む、文様を増やすなどおおまかに分類して11の法則がある

■家紋のバリエーションは創ろうと思えば無限!

 平安時代に誕生した家紋の最隆盛期は江戸時代だが、鎌倉・室町の武家時代に意匠変化により数が増えている。意匠変化には次のような加工パターンがあった。

【多様な「輪」で囲む】
 家紋を丸い輪で囲むパターン。たとえば、片喰紋→丸に片喰紋(1)、鷹の羽→丸に鷹の羽。なお、輪には太輪(ふとわ)・中輪(ちゅうわ)・細輪(ほそわ)や、竹輪(たけわ)・雪輪(ゆきわ)などがある。

【多様な「角」で囲む】
「角かく」とは方形のこと。並び矢に隅立角(すみたてかく)(菱形)の組み合わせ、隅切角(すみきりかく)(八角形)は隅切角に並び矢(2)、と呼ぶ。

【他の文様を加える】
 家紋に新たな文様を加えるパターン。たとえば、梅鉢に剣→剣梅鉢(けんうめばち)(3)、片喰に剣→剣片喰。

【同じ紋を増やす】
◎並び紋
 同じ紋を二つ、または三つ並べる。立鼓→並び立鼓→三つ立鼓(4-1)。
◎向かい紋
 紋を二つにし、向かい合わせる。たとえば、揚羽蝶→向かい揚羽蝶(4-2)。
◎抱き紋
 向かい合う紋を下方で交差させると抱き合う形となる。たとえば、柊(ひいらぎ)→抱き
柊(4-3)。
◎盛り紋
 三つの同じ紋を山形に配する。たとえば、雁金(かりがね)→三(み)つ盛(もり)雁金(4-4)。
◎違い紋
 同じ紋二つを交差させる。たとえば、一つ矢→違い矢。
◎重ね紋
 二つの同じ紋を上下、あるいは左右で重ねる。たとえば、井桁→重ね井桁。
◎他にも現在でいうモノクロ反転して「描き方を変え」て、「陰」と呼ばれるなど。

意匠変化のバリエーションは豊富/変化を施した家紋が新たな原型となり、それがまた変化することでバリエーションが増えてきたと考えていい。今後も新たな変化の登場が期待できるめ
意匠変化のバリエーションは豊富/変化を施した家紋が新たな原型となり、それがまた変化することでバリエーションが増えてきたと考えていい。今後も新たな変化の登場が期待できるめ

Q 名字の種類はそもそもどれくらいあるのか?

A 約30万種、地域独特の変わった名字も

■帰化した外国人が名前に漢字を当てた新しい名字も

 平成8年に出版された『日本苗字大辞典』全3編(芳文館)に約29万1531の名字を収録した姓氏研究家丹羽基二氏は、「姓氏の数は約30万になる見込み」と述べている(『姓氏家系家紋の調べ方』新人物往来社、平成13年刊)。現在では約30万種とみてよい。現在は多少の増減があるかもしれない。

地域独特の主だった名字を取り上げたが、これらはあくまで一例にすぎない。また、意外なことに北海道には古くからの名字は少ない。アイヌ民族には名字がなかったためだ。一方、北海道で最も多いのは「佐藤」である。明治以降、東北からの移住者が多かったため
地域独特の主だった名字を取り上げたが、これらはあくまで一例にすぎない。また、意外なことに北海道には古くからの名字は少ない。アイヌ民族には名字がなかったためだ。一方、北海道で最も多いのは「佐藤」である。明治以降、東北からの移住者が多かったため

 グローバルな時代となった現在、増えている珍しい事例としてふれると、日本国籍を習得する外国人の例をあげることができる。たとえば、サッカーのラモス選手は名字を漢字「瑠偉(るい)」と改め、ロペス選手は「呂比須(ろぺす)」と改めている。また、かつては日本文化研究者のドナルド・キーン氏は「鬼(きーん) 怒鳴門(どなるど)」をみずから公表している。
 
 なお、現在では、たとえば、大島と大嶋・大嶌、斎藤と斉藤、山崎と山崎、渡辺と渡邊・渡邉は別の名字とされるが、くずし字で書かれた江戸時代の古文書を見ていると、いずれも同一人の表記と判断せざるを得ない事例が多い。この点を考慮した場合は、30万種は随分と減ることになる。
(文/菅野俊介)