世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。

【写真】デザインが甘くない!?というシマウマたち

たどり着いたお店で対面したシマウマを購入。わりとガラクタのように販売されていた
たどり着いたお店で対面したシマウマを購入。わりとガラクタのように販売されていた

■シマウマを探し求めて

 タイでは人が亡くなった場所にシマウマの像を置く風習がある。これについては前回の記事「丸山ゴンザレスが心霊スポットでおびただしい数のシマウマに囲まれてしまったワケとは」で述べたとおりである。ここで疑問が浮かんだ。

 このシマウマってどこで買うんだ?

 シマウマ信仰発祥の地とされる廟(びょう)で、大量のシマウマ像を見た時、「これだけ同じ形の像があるということは、どこかで売っているはず」と思ったのである。

 シマウマを探し求めて最初に向かったのはバックパッカーの聖地・カオサン通り。ここは私が学生のときから訪れている場所で、土産物屋がどこにあるかまでバッチリ把握している。しかし、どの店をのぞいても、シマウマは置いていなかった。むしろ馴染みの店がなくなっていたことがわかったぐらいである。

 そこで、観光向けというより、地元の人々が利用する市場に狙いを定めた。なかでも最大規模なのがチャトゥチャック・ウィークエンドマーケットである。その名のとおり、週末だけ開催される市場であり、ここに行って揃わないものはないといわれるほどの巨大さである。

 現地でバンコク在住の友人たちと合流すると、「シマウマが売られている場所、わかりますよ」とあっさり言われてしまった。拍子抜けである。彼らには「シマウマを探す」と伝えていたので、事前に調べてくれていたのだと思われる。友人たちにしても、普通に探したら絶対に見つからないと思っていたところもあるのだろう。実際に、広大な市場では一度行った店にもう戻れないなんてこともざらにある。このときも、いざお目当ての店に案内をお願いしても、広すぎて30分近くかかったほどだ。

お徳用なのか、デザインが甘いシマウマが目立つ…
お徳用なのか、デザインが甘いシマウマが目立つ…

■お店でのシマウマと対面

 店員に「シマウマが欲しい」と伝えると、微妙な顔をされてしまった。なんのために買うんだと言わんばかりである。だが、私もこれのために来ているので、引くわけにはいかない。それどころか、友人に通訳してもらい、「なんのためにシマウマを売っているのか」と取材してみた。すると、「事故とか人が死んだところに置くため」と答えてくれた。

 肝心のシマウマだが、どうもデッサンが甘い。なんとも微妙な顔立ちをしているのである。こだわるつもりはないが、もう少ししっかりしたシマウマが欲しい。そのことを店員に伝えると、子犬ほどのビッグサイズのものをすすめられた。重すぎる。こんなもの、日本に持って帰れるはずもない。仕方がないので、手のひらサイズのシマウマを120バーツ(約420円)で購入した。現在、そのシマウマは私の事務所で鎮座している。(文/丸山ゴンザレス)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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