朝日が輝く高コントラストのシーン。列車が黒くつぶれることなく、ディテールも表現されるようになったのはデジタルカメラがさらに高性能になった証し。ミラーレス一眼が市場で主力になりつつある現在、デジタルカメラの進化がより加速している■ニコン Z 7・AF-S NIKKOR 14~24ミリ F2.8G ED・絞りf11・500分の1秒・ISO400・WB:曇天・ハーフNDフィルター使用・飯山線(信濃平―戸狩野沢温泉)撮影/助川康史
朝日が輝く高コントラストのシーン。列車が黒くつぶれることなく、ディテールも表現されるようになったのはデジタルカメラがさらに高性能になった証し。ミラーレス一眼が市場で主力になりつつある現在、デジタルカメラの進化がより加速している■ニコン Z 7・AF-S NIKKOR 14~24ミリ F2.8G ED・絞りf11・500分の1秒・ISO400・WB:曇天・ハーフNDフィルター使用・飯山線(信濃平―戸狩野沢温泉)撮影/助川康史

 昨今の写真環境を見渡してみると、レンズ交換式のいわゆるミラーレス一眼カメラの台頭が著しい。いまだ一眼レフの愛好家も多いとはいうものの「はたしてミラーレス一眼は鉄道写真撮影に向いているのか?」という疑問について改めて考えてみる。

【ミラーレス一眼で超望遠での鉄道写真はこちら】

【ミラーレス一眼では不安?鉄道写真撮影でのAF能力】

 鉄道写真を楽しむ人たちの中でも、生粋の「鉄ちゃん」は列車の先頭部から姿をフレームいっぱいに写す「編成写真」にこだわりを持つ人が多い。鉄道写真の基本でもある「編成写真」撮影は大切なポイントがいくつかあるが、そのひとつに“動く列車に対して正確にピントを合わせる”ということがある。なかでも動く列車のピントをカメラのAFで追尾し続ける「コンティニュアスAF(AF-CやAIサーボなど)」は望遠~超望遠の被写界深度が浅くいわゆる「置きピン」ではピントのヤマがつかみにくい場合やローアングルで正確なピント位置が見えづらいような撮影時に有効である。像面位相差AFはこの「コンティニュアスAF」にも向いており「編成写真」撮影でも大きな武器になる。

651系「伊豆クレイル」の撮影時は酷暑。超望遠では線路から立ち昇るかげろうで正確な「置きピン」が不可能なので、列車にピントを合わせ続ける「コンティニュアスAF」を選択。ベストなポイントで最良のピントを得ることができた■ニコン Z 6・AF-S NIKKOR 200~500ミリ F5.6E ED VR・絞りf7.1・400分の1秒・ISO125・WB:晴天・東海道本線(早川―根府川)撮影=助川康史
651系「伊豆クレイル」の撮影時は酷暑。超望遠では線路から立ち昇るかげろうで正確な「置きピン」が不可能なので、列車にピントを合わせ続ける「コンティニュアスAF」を選択。ベストなポイントで最良のピントを得ることができた■ニコン Z 6・AF-S NIKKOR 200~500ミリ F5.6E ED VR・絞りf7.1・400分の1秒・ISO125・WB:晴天・東海道本線(早川―根府川)撮影=助川康史

 像面位相差AFはイメージセンサー(CMOSセンサーなど)内の位相差画素がマイクロレンズとスリットを通した光のずれを検知してピント位置を導くシステムである。イメージセンサー面でピントを合わせるのでピント精度は高く、比較的AFも速いのが特徴である。ただし位相差画素はイメージセンサー内に一定間隔で部分的に配置されているので検知しにくい箇所もできてしまう。特にコントラストの低い被写体や小さな被写体では追尾し続けるのがむずかしくなることもある。この点が動体撮影に強い一眼レフの位相差AFを体験した人たちにとって、像面位相差AFは「動体撮影が苦手」と感じさせるのではないだろうか。

 しかし、各メーカーは新しいシステムやAFアルゴリズムの進化を常に追求しており、像面位相差AFの苦手な点を克服しつつある。また、すでに販売された機種に対しても新しいAFアルゴリズムのファームアップなどで、さらにAF精度を上げている。私は、仕事のときも作品づくりのときもミラーレス一眼を使っているが、望遠~超望遠を使った「編成写真」撮影では「コンティニュアスAF」を信頼して使っている。

 このように、ミラーレス一眼のAFシステムの特性と性能をしっかり見極め、撮影場面に応じた最適なAFモードやAFエリアなどの組み合わせを選択すれば、鉄道写真撮影で「コンティニュアスAF」を使っても必ずや思いどおりのピントが得られるはずである。(写真・文=助川康史)

※『アサヒカメラ』2020年2月号より抜粋。本誌では「EVF性能」「ISO感度」などに関する記事も掲載している。