50ミリは「黄金の中庸」。ポートレートでは少し画角が広い感じとなる。■ソニーα7RIII・FE24-27ミリF2.8GM・絞りf2.8・250分の1秒・WB:マニュアル・ISO800・RAW(撮影/赤城耕一)
50ミリは「黄金の中庸」。ポートレートでは少し画角が広い感じとなる。■ソニーα7RIII・FE24-27ミリF2.8GM・絞りf2.8・250分の1秒・WB:マニュアル・ISO800・RAW(撮影/赤城耕一)

 一方で、同じ35ミリ判でもレンズ固定式のコンパクトカメラは35~45ミリくらいの焦点距離のレンズが搭載された。レンズ交換式カメラでもライツミノルタCLとかミノルタCLEでは40ミリレンズが標準だった。画角が広いほうが記念写真やスナップで使いやすく、被写界深度が深く失敗が少ないからだろうか。

■交換レンズでは複数の開放F値を販売

 多くのメーカーでは異なる開放F値の標準レンズを3種前後用意している。

 廉価版の標準レンズとして開放F1.7あるいはF1.8やF2前後。F1.4となれば誰しも憧れる王道中の王道ともいえる標準レンズになる。それ以上の明るいF1.2やF1.1、F1.0、F0.95ともなれば、超特殊なレンズの部類に入った。これらは一部の富裕層など特別な人のために用意されたものだ。
 
 大口径レンズは、海外ではハイスピードレンズと呼ばれる。フィルムカメラでは感度を自由に変えられないから、たかが2段前後の開放F値の違いが、今より断然利点が大きかった。富士フイルムが世界初のISO400のネガカラーフィルムであるフジカラーF-II400を発売したのは76年のことだ。その前までは微光量下での撮影では、大口径レンズが不可欠だった。当時の『アサヒカメラ』をみても、大口径のレンズの大きなボケ味わいがどうたらという理屈は読んだ記憶がない。24ミリや105ミリの焦点距離のレンズでF1.4というレンズは夢のまた夢だった時代だ。

 標準レンズはお仕着せであり、画角も固定される。パースペクティブの誇張はなく、画角も肉眼でモノを注視したときの感覚に似ている。だから目に優しい。標準レンズは黄金の中庸であり、ひとつの基準となる画角だ。ここから人は自分の表現やモチーフにより交換レンズを選択することになる。最初からズームレンズを使っていたり、ズームレンズに慣れきったりしてしまうと、焦点距離の違いによる特性を理解するのに時間がかかるかもしれない。改めて、50ミリという画角を意識してみてはいかがだろうか。(写真・解説/赤城耕一)

※『アサヒカメラ』2020年1月号より抜粋。本誌では35ミリ~70ミリレンズについて、焦点距離の違いによる画角変化と特性を比較している。