夕日を浴びながら19時の発車を待つ高速列車「アル・ボラク」。タンジェ・ヴィル駅でホームに入ることができるのは該当列車の乗客のみで、航空機と同様にボーディング時間にならないとゲートはオープンしない。やむなくホーム横の歩道から金網越しで撮った1枚。かつてのモロッコ国鉄は、もっと大らかだったが■オリンパスOM-D E-M1 MarkII・12~100ミリF4・絞りf5.6・ISO800・AE・マイナス0.3補正・JPEGスーパーファイン(撮影/櫻井寛)
夕日を浴びながら19時の発車を待つ高速列車「アル・ボラク」。タンジェ・ヴィル駅でホームに入ることができるのは該当列車の乗客のみで、航空機と同様にボーディング時間にならないとゲートはオープンしない。やむなくホーム横の歩道から金網越しで撮った1枚。かつてのモロッコ国鉄は、もっと大らかだったが■オリンパスOM-D E-M1 MarkII・12~100ミリF4・絞りf5.6・ISO800・AE・マイナス0.3補正・JPEGスーパーファイン(撮影/櫻井寛)

 22年ぶりにスペイン最南端の駅、アルへシラスに降り立つ。ホームが2本のみの小さな駅だが、この駅はスペインのみならずヨーロッパ大陸最南端の終着駅である。

【モロッコ王国を目指し、一路ジブラルタル海峡を進む。高速双胴船の写真はこちら!】

 だが今回の私の目的地はさらに南。ジブラルタル海峡の対岸に位置するモロッコ王国である。

 22年前の記憶を頼りに、駅からアルへシラス港へ向かう。徒歩5分ほどと記憶していたが、15分もかかった。3倍ほど年をとったというわけだ。窓口でモロッコのタンジェ港行きフェリーのチケットを求める。ところが、フェリーはなく、ジェット(高速船)のみだと言う。

 さらに、バスで行くように言われる。港は目の前なのに、おかしなことを言うなと思ったが、とにかくバスに乗ってみれば、着いた港はアルへシラスよりも南西に位置するスペイン最南端のタリファ港だった。

時速37.3ノット(約70キロ)でジブラルタル海峡を行くウェーブ・ピアサー高速双胴船「タリファ・ジェット」。船の背後にそびえるのはアフリカ大陸のアビラ岩(撮影/櫻井寛)
時速37.3ノット(約70キロ)でジブラルタル海峡を行くウェーブ・ピアサー高速双胴船「タリファ・ジェット」。船の背後にそびえるのはアフリカ大陸のアビラ岩(撮影/櫻井寛)

 なるほど、この航路のほうが、ヨーロッパ─アフリカの最短コースというわけだ。驚いたことは、ジブラルタル海峡横断は、たったの35分!22年前に乗ったフェリーが2時間30分を要していたことを思えば、高速船がタイムマシンに思えた。

 かくして、あっと言う間にモロッコのタンジェ港に上陸した。以前よりも高層ビルが増えたとは思ったが、城壁に囲まれたメディナ(旧市街)やカスバ(要塞跡)の中は昔ながらのアラビアンナイトの世界で、変わっていないところは、何も変わっていない。ほっとして、モロッコ名物ミントティーでのどを潤した。

 翌朝、タンジェからカサブランカを目指す。22年前にはタンジェ・ガール駅から、ディーゼル機関車が牽引する急行「ベーダ」に乗ったことを思い出したが、街中のこぢんまりとしたタンジェ・ガール駅は姿を消し、代わって新市街に壮大なタンジェ・ヴィル駅が出現していた。

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乗車したのはフランス製にしてエキゾチックな高速列車