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木村伊兵衛流 レンズの特色を熟知して撮影に生かす

連載31 木村伊兵衛の「傑作が生まれる瞬間」

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田沼武能dot.#木村伊兵衛
佃島にて(1972年)

佃島にて(1972年)

 以前にも書いているが、木村伊兵衛は庶民生活に魅力を感じ被写体の対象にしている。その生活が道路上に露出して見える佃島には足繁く通っていた。

 今回のコンタクトプリントには正月気分の晴れ姿の若い女性たちが写っているが、単なる通行人で終わっている。この撮影行では三日間で三本撮影している。佃は当時まだ漁師町であった。

 船溜まりの脇をぬけた道端で飴細工屋とそれを見る子どもに出会う。一人の子が飴細工に興味を持ち、車に腰をかけトリやイヌなどを細工する手元を真剣なまなざしで見つめる。その光景を逆光線で捉えている。

 逆光にしたのは画面をドラマチックに表現するためである。木村は新しいレンズを手に入れると、とことん研究して特色を学んでいる。このレンズは逆光線で撮ると画面に光芒が出る、それを狙ったのだろう。こんな写真を撮ると必ず「イキなもんだよタヌちゃん(私のニックネーム)」が飛び出す。自画自賛である。

 密着では画面がよく見えないが、プリントをすると子どもが飴細工を懸命に見る姿が出てくる。ちなみに少年が飴細工を見つめる光景は6コマの中この一枚であった。

選・文=田沼武能(たぬま・たけよし)
1929年、東京・浅草生まれ。49年サンニュースフォトス入社と同時に、木村伊兵衛氏に師事。アメリカのタイム・ライフ社との契約を経て72年に独立。2019年秋、写真界初の文化勲章を受章。

※『アサヒカメラ』2019年12月号より


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