世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。

【写真】圧巻!囚人たちのダンス

こんな近くで囚人と接することができるのはここだけだろうと思っていたが、世界中を周ると意外とあったりする
こんな近くで囚人と接することができるのはここだけだろうと思っていたが、世界中を周ると意外とあったりする

■「刑務所ダンス」を観るには?

 今回はフィリピンのセブ島の観光案内も兼ねている。お伝えする「刑務所ダンス」は私が取り上げるまでもなく有名だからだ。何年か前にYou Tubeにアップされ、世界中に知られることになった。

 だが、実際に行くとなると少し面倒だった。私が行った当時の参加方法を紹介しよう。ダンスは、毎月1回、最終土曜日だけ一般に開放されていた。そして事前にセブ州庁舎の事務所に申請が必要だった。なかでも私にとって最も困難なのが朝、送迎バスに乗るためにセブ・キャピタルに集合しないといけないことだ。

「どこが難しいの?」

 そう思うだろう。だが、私にとって早起きほど辛いものはない。特にセブ島の夜など、飲んだくれろと言わんばかりの環境である。ほかの皆さんはどうか知らないが、とりあえず、集合さえできれば、あとはバスに揺られて山道や抜け道を30分かけて移動するだけ。見学料は無料である。

囚人ダンスはキレッキレなのだが、一軍・二軍とかがありそうな雰囲気。実際、ダンスのテクニックだけじゃなく、その人の権力的な部分で序列が決まったりもするとか、しないとか。一番えらいのは振付師なんだってさ
囚人ダンスはキレッキレなのだが、一軍・二軍とかがありそうな雰囲気。実際、ダンスのテクニックだけじゃなく、その人の権力的な部分で序列が決まったりもするとか、しないとか。一番えらいのは振付師なんだってさ

■振付師に怒られるカオス

 刑務所内に入るには身体検査があったが、問題なく入ることができた。セブ島の刑務所には凶悪犯もいるらしいが、カメラを向けても怒られることはない。むしろ「写真撮って」とアピールされる始末だ。

 刑務所内の施設や設備だが、これは運動場にあるトレーニングマシーンぐらいしか見られなかった。どうやら、それ以上の内部に一般人は入れないらしい。

 施設内では刑務所の囚人Tシャツが販売されているそうだ。買いたかったのだが、すぐに売り切れてしまい、入手することはできなかった。

 そんななか、看守以外の人物で囚人たちにゲキを飛ばしている人物がいた。振付師だ。面白そうだったので、撮影しようとしたらかなり怒られた。囚人は撮影してもいいのに、振付師はダメって……。

 そんなカオスなダンスだったが、セブ島取材のハイライトのひとつである。(文/丸山ゴンザレス)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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