毎年、4月下旬から5月1週目までが桜が咲く季節で、それが終わるとまったく人は来なくなるという。まさに嵐のようにやってきては去っていくマナー違反者が、毎年のように集まってくる。来年も同じことが繰り返されるかと思うと、暗澹たる気持ちになると黒田さんは言う。

「地元の人は農家のかたがどれだけ苦労しているか知っています。県外ナンバーの車が多いことから、マナー違反者はほとんどが県外の人だと思います。周囲がやっているからいいと思わず、その行為がいかに地元の人を困らせているかをもっと真剣に考えてほしいです」

 白馬村だけでなく、撮影スポットにおけるマナー違反は全国各地で発生している。だが、鉄道などに比べて風景写真は撮影ポイントが一般人の目に触れない場所も多いことから、これまではマナー違反が可視化されにくかった。

 そこで本誌は8月にSNSなどで「風景撮影のマナーに関するアンケート」を実施。身近で目撃したマナー違反やトラブル事例を募集した。すると、わずか3週間で414件(8月28日時点)もの回答が集まった。多くの写真愛好家がマナー違反に憤っていることがうかがえた。

 回答の中には、マナー違反では片づけられないような悪質な行為も散見される。写真を撮るためならば何をしても許されると勘違いしている一部の人が、傍若無人な振る舞いをしていることが明らかになった。そこで、写真撮影に関する法律問題に詳しいみずほ中央法律事務所代表の三平聡史弁護士に検証を依頼。具体的な事例をみてもらったうえで、マナー違反を超えて「法律違反」になり得るケースを指摘してもらった。

 以下、事例ごとに分類したうえで、法律に抵触した場合の法定刑も明記した。なお、事例にはアンケート回答だけでなく個別取材の結果も付記してある。

■撮影場所の占有

迷惑行為として最も多かった回答が、やはり「場所取り」。三脚や脚立による過剰なスペースの確保、グループによる占有など多くの声が寄せられた。風景撮影では、ある程度の場所取りは暗黙のルールとして許容されていることも多い。だが、空いているスペースに入ったら「そこは俺の場所だ」と怒鳴られたり、後から来た人を「画角に入るからどけ」などと排除したりと、自己中心的な振る舞いに多くの人が怒っている。

次のページ
場所取りの事例と弁護士の見解