中央緩行線下り列車が走る、レンガ造りの残る御所トンネル(写真/photolibrary)
中央緩行線下り列車が走る、レンガ造りの残る御所トンネル(写真/photolibrary)

■都心に残る赤レンガのトンネル 御所トンネル

 中央線の四ツ谷~信濃町間でトンネルを通過する。個人的な話になるけれど、子どものころはこんな都心に地下鉄とは異なる「普通のトンネル」があるのが面白く、通るたびに目を輝かせていたものだ。

 このトンネルが御所トンネルで、1894(明治27)年に開業という長い歴史を持つトンネルである。中央線の前身である甲武鉄道が牛込(現・飯田橋)~新宿間を延伸するさい、ルート上に位置する赤坂御所直下を通過するために設けられた経緯がある。

 この区間は1929(昭和4)年に複々線化されたため、現在は4本のトンネルとなっているが、このうち最も西側に位置する1本が開業当時につくられた初代御所トンネル(約317m)である。

 四ツ谷側の坑口は赤レンガ積み。色あせた姿がその年季を物語っており、神田や御茶ノ水付近に残る施設と並び、中央線が古い歴史を持っていることをうかがわせる。一方、反対側の信濃町方は新トンネルと同様のコンクリート式になっており、見学するのであれば四ツ谷側からがおススメ。

 この最古のトンネルを通るのは、総武緩行線の下り列車。したがって、赤レンガの坑口を車内からチェックするとすれば、最後尾車両から後追いで眺めることになる。(文/植村 誠)

○植村 誠(うえむら・まこと)/国内外を問わず、鉄道をはじめのりものを楽しむ旅をテーマに取材・執筆中。近年は東南アジアを重点的に散策している。主な著書に『ワンテーマ指さし会話韓国×鉄道』(情報センター出版局)、『ボートで東京湾を遊びつくす!』(情報センター出版局・共著)、『絶対この季節に乗りたい鉄道の旅』(東京書籍・共著)など。