私は負けずに「動物ならいるだろ!」と指を下に向けながら応酬。実は足元で子犬と鶏がじゃれていたのだ。その発言を聞いて「ひゃひゃひゃ!!」と笑い出す警備員。どうやら、笑いのツボに入ったらしい。彼のはからいで、どうにか園内に入ることができたのだ。


動物の代わりに檻に入ったゴンザレス
動物の代わりに檻に入ったゴンザレス

■園内に入ると……

 今年の4月の段階で来場している人がいたことは、観光客と思われる人たちのSNSへの投稿で判明している。私が訪れたのは8月。どうやら、この4カ月の間に動きがあったのだろう。

 閉園してしまったので意味のない情報だが、本来の入場料は25ペソ(約60円)だった。私の訪問時には、交渉の末に50ペソ払うことで落ち着いた。

 園内を歩くと池があったり、檻の形状などから猿、蛇、ワニ、鳥、鹿なんかがいた痕跡をうかがうことはできる。どの施設もほぼ倒壊していた。だが、自由度の高い動物園だけあって、私が檻の中に入るのも自由だった。

 動物のいない動物園は、20分もしないで見終わった。おそらく再開されることはないだろう。セブ島屈指のB級スポットは、閉鎖したと断言しておく。

 結論としては、「いつまでもあると思うなB級スポット」ということである。特に開発の速度がめざましい東南アジアのようなところでは、新しく近代的なものこそが求められる。B級スポットは開発の流れで次々に消えていく定めにあるのだ。思い立ったら、すぐに観光することをおすすめしたい。(文/丸山ゴンザレス)

著者プロフィールを見る
丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

丸山ゴンザレスの記事一覧はこちら