150メートル長尺レール輸送用の貨車は、積み荷が特殊であることから専用車両となり、日鉄物流八幡(当初は日鉄住金物流八幡)の私有長物車が用いられる。編成は9両で、チキ5400+チキ5500×3+チキ5450+チキ5500×3+チキ5400となっている。

 このうちチキ5500型は、国鉄時代からのチキ5500型の置き換え用として、コキ100系をベースに1992年から新製された私有貨車で、形式番号がハイフン付きになっている。当初は国鉄型のチキ5500型とともに3両編成で50メートルレール輸送に使用されていたが、両端車と中央緊締車を2014年に新製し、チキ5500型の3両編成を2本中間車にあてることで、新たに専用編成が組まれた。

中央緊締車のレールを固定する部分。固定具の下にレールの間隔を決めるパーツがあり、写真は黄色い部品で60レールである(撮影/高橋政士)
中央緊締車のレールを固定する部分。固定具の下にレールの間隔を決めるパーツがあり、写真は黄色い部品で60レールである(撮影/高橋政士)

 レールは50Nレール(レールの重量)、または60レールを28本積載できるが、空車かフル積載とすることで走行性能が安定するように設計されたため、少量だけ載せて使用されることはない。積載は全車両にガイドを設け、レールの固定は中央緊締車のみで行い、ほかの貨車は荷重だけを負担する。積み荷の固定を中央のみで行うことで、列車がカーブに差し掛かっても積み荷のレールがしなることで問題なく通過できる。

 中央緊締車でレールの間隔を決めているパーツは、50Nレールが緑色、60レールが黄色となっていて、積載しているレールを見分けることができる。28本のレールが貨車の進む通りに曲がってゆくシーンは、写真のように圧巻である。

山陽本線八本松~瀬野間の通称「セノハチ」を越えるレール輸送列車。写真は後方からの撮影で、勾配の後部補機としてEF210-305が連結されている(撮影/高橋政士)
山陽本線八本松~瀬野間の通称「セノハチ」を越えるレール輸送列車。写真は後方からの撮影で、勾配の後部補機としてEF210-305が連結されている(撮影/高橋政士)

■新システム導入でレール交換作業を効率化

 150メートル長尺レール輸送は2019年8月現在、JR東海では西浜松で在来線と新幹線用を受け入れている。JR西日本では新下関、福山、御着(兵庫県)の3カ所で、いずれも新幹線用を受け入れている。

 新下関から広島以東に輸送される150メートル長尺レールは、貨物列車に後押しの機関車(補機)が連結されることで有名な、セノハチ(東広島→西条)を通過する。この際、9両編成では補機が連結される場合と連結されない場合がある。この違いは50Nレールか、60レールを積載しているかによって決定される。50Nレールが28本だと積み荷の重量は210トン。60レールの場合だと252トンとなり、この42トンの差によって補機の連結が決定される。

 JR東日本では越中島貨物(東京都)、東鷲宮(埼玉県)、岩切(宮城県)で受け入れを行っており、越中島貨物は在来線用の50Nレールと60レール、東鷲宮は東北新幹線用に60レールのみ、岩切は現在のところ在来線用の50Nレールと60レールを受け入れている。

 東北新幹線の大宮~仙台間では2017年2月からレール交換が行われているが、実は1982年の開業以来初めてのレール交換だ。JR東日本では効率よく交換作業をするため、東北新幹線レール交換システム「REXS(レックス)」を導入した。レール交換は大宮から順次北へ進み、150メートル長尺レールの受け入れは、東鷲宮の次は那須塩原、郡山、岩切が予定されている。(文/高橋政士)