先に組み立てられた、鏡筒ユニットや防振ユニットが次々と組まれていく(撮影/柴田 誠)
先に組み立てられた、鏡筒ユニットや防振ユニットが次々と組まれていく(撮影/柴田 誠)

 防振ユニットは、センサーを組み込むカメラの要となる部分。IRカットフィルターの内部にゴミやほこりが入らないよう、クリーンルームの中にさらにクリーン度の高い(ゴミが少ない)部屋が設けられている。ここはクラス1000のクリーン度を基準にしているそうだが、実際はそれ以上100以下のクリーン度だそうだ。

 センサーにゴミが付着していないか、顕微鏡を使って目視で確認し、IRカットフィルターを接着してユニットに組み込んでいく。組み上がった防振ユニットは、個体ごとに感度を調整するほか、動作音、画質、ピントなどが次々とチェックされていく。

画面奥から流れてきた製品を手前で機能チェックする。ここでも専用のボックスが使われている(撮影/柴田 誠)
画面奥から流れてきた製品を手前で機能チェックする。ここでも専用のボックスが使われている(撮影/柴田 誠)

 そしていよいよ、カメラボディーへの組み立て工程。協力会社で作られたマグネシウム合金の外装に、鏡筒ユニットと防振ユニットが組み込まれ、ダイヤル・ボタン類を取り付けて外装ラバーが貼られると、やっと見慣れたGRIIIらしくなる。もちろんここでも外装に傷がないか、画質や動作、無線LAN機能などがチェックされる。また、この段階でファームウェアも最新のものにアップデートされ、最新の状態として出荷できるGRIIIが完成する。

■梱包時も細かくチェック 化粧箱にはビニールを

 さまざまな検査項目をクリアして、クリーンルームから送り出されたGRIIIは、やっと箱詰めされて出荷となる。しかし、ここでも多くの検査や点検をパスしなくてはならない。

GRIIIの梱包作業。工場内の番号から、ここで出荷用のシリアル番号のバーコードに切り替えられる(撮影/柴田 誠)
GRIIIの梱包作業。工場内の番号から、ここで出荷用のシリアル番号のバーコードに切り替えられる(撮影/柴田 誠)

 GRIIIは外箱にも気を使われており、傷がつかないように畳まれた段ボールが一箱ずつビニール入りで納品されている。通常、外箱は輸送用のためのものなので、些少の傷を気にしないのが一般的だが、そこはGRユーザーへの心配り。箱を開けるときのワクワク感を大事にしたいという思いが込められている。

 カメラ本体のほかに、説明書やケーブル、バッテリーといった各種内容物が箱詰めされ、バーコードが貼られると終わりかと思うとそうではない。入れ忘れたものがないか、最終的に箱の重さを量って確認する。そこで問題がなければ、いよいよ出荷となる。

 ここまで徹底した点検をしていれば、不良品や不足品はまずない。小さなボディーに込められたさまざまな思いがあって、それがGRIIIになっている。それが伝わってくる工場取材だった。

写真と文=柴田 誠

アサヒカメラ2019年8月号より抜粋