ベトナム・ハノイにあるGRIIIの生産工場(撮影/柴田 誠)
ベトナム・ハノイにあるGRIIIの生産工場(撮影/柴田 誠)

 小型・軽量と高機能を両立させ、根強い人気を持つコンパクトカメラのリコーGRシリーズ。最新モデルのGRIIIは、「カメラグランプリ2019カメラ記者クラブ賞」を受賞、中国をはじめ世界的に売れ行きも好調とのこと。いったいどんなところで生産されているのか、ハノイの工場をリポートする。

【写真】鏡筒ユニットの取り付け作業

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 リコーGRIIIを生産しているのは、リコーイメージングの子会社であるリコーイメージングプロダクツ(RICOH IMAGING PRODUCTS(Vietnam)Co.,LTD.)だ。ベトナムの首都ハノイ郊外ロンビエン区にある工業団地サイドンBの工場で、もともとペンタックスブランドのレンズの主要工場だったところだ。

 ベトナムは、中国から東南アジアへと工業製品の生産拠点が移っていく中で注目されている国の一つ。勤勉な国民性と細かな作業を丁寧にこなすことなどを理由に、日本から進出している企業も少なくない。日本に対する憧れもあり日本語教育も盛んで、技能実習生として来日しているベトナム人が多いのもそうした理由からだ。

 南北に長いベトナムには、各所に工業団地が点在しているが、北部にあるハノイ近郊では主に工業製品が生産されていることが多い。一方、南部のホーチミンでは部品関連の工場が多い傾向にある。

 リコーイメージングプロダクツのハノイ工場は、1995年からレンズの加工や組み立てをスタートしている。のちにペンタプリズムの加工や試作レンズの加工なども行うようになる。2015年からは一部のデジタル一眼レフカメラのボディーの組み立てを開始。工場は徐々に拡大していき、現在の敷地面積は3万5千平方メートルだ。

 ただしライセンス(ベトナムとの間で交わした工場を造るにあたっての契約)の関係で、この工場で生産した製品は全て輸出用となっている。

■女性が活躍するリコーの工場

 女性のほうがよく働くと言われているベトナムだが、この工場でも働き手の多くは女性。現在、工場では千人ほどの従業員が働いているが、約75%が女性で、30代の女性の構成比率が高い。ベトナムの平均年齢が31歳だから、まさに働き盛りが集まっている職場で、活気がある。

 日本からの駐在員は井原雄一社長を含めて6人。特徴的なのは、現地の管理職のうち女性が50%を超えていること。もともと女性の多い職場だが、彼女たちに責任ある仕事を任せている企業はそう多くはない。

 工場では、おなかの大きい妊婦を見かけることも珍しくない。実際、出産の前日まで働く人も多く、出産後もすぐに職場復帰するのだそうだ。

 GRIIIの生産は、2棟ある工場の一角で行われている。GRIIIの製造エリアはクリーンルームの中。取材するには、専用の作業着に着替え、マスクをして入る必要がある。クリーンルームなので、女性であっても化粧や香水はもちろん、アクセサリーをつけての作業はできない環境になっている。ちなみに、工場内の表記はベトナム語と日本語の併記になっている。

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