この日、たった1時間のパトロールで6名からニャオペを没収・破棄した。この成果は平均的なものであるというから、この地域においてニャオペの氾濫がいかに深刻なものかがわかる。マドンセラ氏は「焼け石に水なのかもしれない。しかし、地道な活動を続けるほか道はない」と語った。

 その通りなのだろう。6名のうちほとんどが、取り調べを受ける間に言葉を発することすらなかったが、1名だけ悲痛な心の内を訴える者がいた。「仕事もない。いい事もない。薬しかないんだ」。そう何度も叫んでいた。

男性(左)は「ニャオペ以外に生きがいがない」と叫ぶ。その傍らの男性(右)が、10名前後の自警団に囲まれているにもかかわらず、淡々とニャオペと大麻の巻き煙草を作り続けていたのがただ異様だった(撮影/小神野真弘)
男性(左)は「ニャオペ以外に生きがいがない」と叫ぶ。その傍らの男性(右)が、10名前後の自警団に囲まれているにもかかわらず、淡々とニャオペと大麻の巻き煙草を作り続けていたのがただ異様だった(撮影/小神野真弘)

 南アフリカの失業率は27%(2018年)。アフリカ諸国のなかでは経済発展が進んでいるものの、格差は拡大を続けており、貧困層の人々の間では行きどころのない絶望が渦巻いている。薬物乱用や高い犯罪率はその発露なのだ。どうすれば現状を打破できるのか、その答えを得るために誰もが手をこまねいている。

(取材・文/丸山ゴンザレス、小神野真弘)