画質を攻めるAPS-C用大口径広角ズーム
画質を攻めるAPS-C用大口径広角ズーム

 APS-Cサイズ一眼レフ用の大口径広角ズームで、35ミリ判に換算して17~27.5ミリ相当をカバーする。このレンズの登場により先発の16~50ミリ、50~135ミリの開放F2.8統一のズームが広角、標準、望遠の3本そろったことになる。

【このレンズで撮影された写真はこちら】

奥行きを感じる大口径らしい仕上がり。絞り開放のため周辺部が落ちた再現になったが、悪くはない。ピントはシャープでメリハリがある●16ミリ時・PENTAX KP・絞り優先AE(絞りf2.8・3200分の1秒)・ISO200・AWB・RAW
奥行きを感じる大口径らしい仕上がり。絞り開放のため周辺部が落ちた再現になったが、悪くはない。ピントはシャープでメリハリがある●16ミリ時・PENTAX KP・絞り優先AE(絞りf2.8・3200分の1秒)・ISO200・AWB・RAW

 将来的なカメラの高性能化に対応するべく最新の設計により開発。実際その描写力は、絞り開放から高解像で高水準、問題なく実用に足る。絞り開放時に周辺部で光量不足が見られるものの、像の流れはほぼなく、落ち具合もまた美しい。絞りf5.6やf8あたりの引き締まった再現は秀逸だ。有害光の影響を受けやすい広い画角ながら、逆光時などでの再現低下も少なく、★(スター)レンズの名にふさわしい高性能である。ちなみに鏡胴にあるDA★のバッジは新デザインを採用、新世代のスターレンズであることを表している。

超広角域とはいえ、周辺まで破綻が少ない再現。広角特有のゆがみも感じない。円形絞り採用で、短焦点側f4.5まで、長焦点側f5.0までが軟らかなボケ味が得られる目安となる●11ミリ時・PENTAX KP・絞り優先AE(絞りf2.8・80分の1秒・+0.3補正)・ISO800・AWB・JPEG
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超広角域とはいえ、周辺まで破綻が少ない再現。広角特有のゆがみも感じない。円形絞り採用で、短焦点側f4.5まで、長焦点側f5.0までが軟らかなボケ味が得られる目安となる●11ミリ時・PENTAX KP・絞り優先AE(絞りf2.8・80分の1秒・+0.3補正)・ISO800・AWB・JPEG

 この高い描写性能を最小構成枚数で実現して、小型・軽量との両立に結びつけているのも素晴らしい。さらにペンタックスカメラのコンセプトであるフィールド用途のカメラとしても進化させている。

描写性だけでなく使い勝手もよい。AF作動はスムーズで滑らかである。ここではf5.6まで絞ったことで、いっそう整った再現になった。個人的にはあまり絞り込みすぎないほうが好みだ●18ミリ時・PENTAX KP・絞り優先AE(絞りf5.6・800分の1秒)・ISO200・AWB・JPEG
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描写性だけでなく使い勝手もよい。AF作動はスムーズで滑らかである。ここではf5.6まで絞ったことで、いっそう整った再現になった。個人的にはあまり絞り込みすぎないほうが好みだ●18ミリ時・PENTAX KP・絞り優先AE(絞りf5.6・800分の1秒)・ISO200・AWB・JPEG

 本レンズでは、新たにフォーカスクランプ機構を搭載する。これはスライドスイッチ操作によりピントを固定するもので、長時間露光を活用する風景や星空などの天体撮影時に有効である。

新機構のフォーカスクランプ機構。ONにするとピントが固定され、フォーカスリングを回しても動かない。不用意なピントのズレを防止するのに有効だ
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新機構のフォーカスクランプ機構。ONにするとピントが固定され、フォーカスリングを回しても動かない。不用意なピントのズレを防止するのに有効だ

 また、結露防止のレンズヒーター対応の設計であるのもこれまでにない特長だ。レンズ先端にはワイヤータイプのヒーター用の溝を備えるほか、ベルトタイプのヒーターを巻きやすいように同一径で段差のない外観形状になっている。さらに熱伝導しやすいように光学系まで金属部品で接する構造が採用されている。ヒーターをフォーカスリングの上に巻いた際にも、前記したピント位置が動かないフォーカスクランプ機構が有効になる。そのほか、防塵・防滴構造はもとよりマイナス10~40度での動作保証と、堅牢な鏡胴構造、手袋装着時でも操作性を損なわない操作リングのパターン形状など、アウトドア使用に対して配慮が行き届いている。描写性能に特化しているわけではない点が新しい。サイズから外観の形状、構成枚数まで、いろいろな要素が関連して成立。高次元でバランスよくまとまっているのが魅力で、このかたちに無駄がない点に完成度の高さを感じる。間違いなく一級品のレンズである。

写真・文 竹中隆義

新デザイン採用のレンズバッジ。APS-Cサイズ一眼レフ専用レンズとしては初となり、新たな世代の始まりを示している
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新デザイン採用のレンズバッジ。APS-Cサイズ一眼レフ専用レンズとしては初となり、新たな世代の始まりを示している

●焦点距離・F値:11~18ミリ(35ミリ判換算で17~27.5ミリ相当)・F2.8
●レンズ構成:11群16枚(非球面レンズ2枚、特殊低分散ガラス2枚、特殊低分散ガラス非球面レンズ1枚)
●画角:104~76°
●最短撮影距離:0.3メートル
●最大撮影倍率:0.10倍
●フィルター径:φ82ミリ
●大きさ・重さ:約φ90×100ミリ・約704グラム
●価格:税別標準21万円(税込実売18万900円)
●URL:http://www.ricoh-imaging.co.jp/
●TEL:0570-001313

アサヒカメラ2019年4月号より