1 鞆の浦~尾道(広島県)
【人と猫が共存する古い街】
港から続く古くて狭い石畳の道を奥へ歩き、急な階段を上ると、一眼レフを持った若いカップルがそれぞれひざに猫をのせてくつろいでいた。あまりに猫がなれているので地元の人かと声をかけると旅行者だという。
場所は広島県福山市の鞆の浦。JR福山駅からバスで約30分。万葉集にもうたわれたほど古い歴史的観光地なうえに、猫が絵になる「高低差」「港」「古社古刹」「狭い路地」が勢ぞろいした稀有な街なのである。瀬戸内海というと猫島が有名だが、猫が人と共存する古い街もよいものである。
猫を観光の目玉にしている尾道もこの四つを備えた街。急斜面の路地を散歩すると高い頻度で猫と出会うし、山上にある千光寺へ向かう急坂沿いでは人なつこい猫と観光客が戯れている。
尾道市と福山市は隣接しており、山陽本線で1本だが、鞆の浦は駅から離れているので、船で移動するのがよさげだ。土日祝日に限り、鞆港と尾道駅前を1日2往復の船が出ている。
2 長崎
【尾曲がり猫に出会える坂の街】
「高低差」「港」「古社古刹」「狭い路地」の四つがそろって、猫に会える街といえば、長崎も忘れてはならない。
出島や大浦天主堂、グラバー園と観光名所に事欠かないが、風光明媚なうえに猫が多いのである。しかもその多くが、しっぽがかぎ状に曲がった「尾曲がり猫」。遺伝子を調べたところ、そのルーツは東南アジアにあるらしいのだ。
長崎といえば、江戸時代、日本唯一のオランダとの交易窓口だった出島。そのオランダ東インド会社の拠点があったのはインドネシア。ネズミ対策として船に乗せた猫が長崎で繁殖したと考えられている。長崎の歴史を猫が受け継いでいると思うと感慨深い。
猫と出会うならより古い街へ向かうのが基本。江戸時代から続く寺町と並行する中通り商店街を歩いていると、尾曲がり猫とよく出会う。
もうひとつは坂の上。長崎は坂の街であり、訪れたならその地形を味わわないともったいない。路面電車網が充実しているので疲れたら電停まで下りればなんとかなろう。