ジョジョ立ちをする奥平校長(左)と小泉さん(撮影/写真部・小原雄輝)
ジョジョ立ちをする奥平校長(左)と小泉さん(撮影/写真部・小原雄輝)

「今朝、ジョジョ立ちをしたいと校長先生に話したら、『いいよ、やろう』とすぐに言ってくれました。打ち合わせは5分くらいしました。卒業後は知り合いの事業を手伝う予定です。N高に入ってよかった」(小泉さん)

 オンとオフがつながった卒業式は、海を越えて遠く離れたアメリカでも行われている。ネット参加生徒代表として、佐々木雅斗さんが遠隔操作ロボット「ANA AVATAR」を使ってシリコンバレーから式に出席するなど、まさに近未来的な空間が広がっていく。

シリコンバレーにいる佐々木さんへ卒業証書を読み上げる(撮影/写真部・小原雄輝)
シリコンバレーにいる佐々木さんへ卒業証書を読み上げる(撮影/写真部・小原雄輝)

 卒業生に寄せられたメッセージも豪華だった。京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授からビデオメッセージが、さらには、サプライズで、移動中のDA PUMPと中継がつながり、メンバーのISSAらが生徒たちの質問にリアルタイムで答えるなど、式場は大盛り上がりだった。

サプライズでDA PUMPと中継がつながった。移動中のため、揺れた映像が臨場感を出していた(撮影/写真部・小原雄輝)
サプライズでDA PUMPと中継がつながった。移動中のため、揺れた映像が臨場感を出していた(撮影/写真部・小原雄輝)

 開校当初、「すべての生徒がN高校に自信を持てるようにしたい」と奥平校長はメディアで語っていた。だが、ネットの高校という斬新さから世間の注目を集める一方で、冷ややかな目を向けられることもあったと、卒業生の塩屋敬加さんは答辞でこう振り返った。

「ネットの高校という響きだけで、ネットの中に閉じこもって3年間を過ごすと思われている方も多くいました。開校当初は世間から信じられないほどのバッシングを受け、心が折れそうになったこともありました」

 だが、最近は風向きの変化を感じている。

■女子フィギュア 紀平選手も在籍

「『N高校にしか行けない』ではなく、『N高校に行きたい』という生徒が増えている」と奥平校長は言う。開校から3年を経て、徐々に認知度も上がってきた。昨年はフィギュアスケート女子の紀平梨花選手がN高校に進学したとことでも話題を呼んだ。他にも、起業を実現した生徒やeスポーツのアジア競技大会で金メダルを獲得した生徒、国際情報オリンピックで銅メダルを獲得した生徒など、さまざまな分野で頭角を現している。

シリコンバレーにいる佐々木さんと同級生ら(撮影/写真部・小原雄輝)
シリコンバレーにいる佐々木さんと同級生ら(撮影/写真部・小原雄輝)

「世界で、地元で、ネットで。生きている人の数だけ輝く世界があっていいと、私は考えています。そしてまた、それぞれが輝く世界で出会ったときはよろしくお願いします。どこかで皆さんに会える日を楽しみにしています」(塩屋さんの答辞から)

 式が終わったあと、入り口で団子状態になる卒業生たち。見ると、奥平校長が一人ひとりと握手を交わしていた。普段はネットでも、実際に深まっていた生徒と学校との絆。

想いが溢れ、生徒とハグする奥平校長(撮影/写真部・小原雄輝)
想いが溢れ、生徒とハグする奥平校長(撮影/写真部・小原雄輝)

「卒業生への思いがこみ上げてきて、ついやってしまいました」

 1593人の卒業生が、ネットの高校を飛び出した。ご卒業おめでとうございます。8888。(AERA dot.編集部・福井しほ)

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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