「オススメの撮影モードは?」の質問者が撮影した写真
「オススメの撮影モードは?」の質問者が撮影した写真

■Q オススメの撮影モードは?(宮城県・仙センの485さん)

助川:この写真、いいじゃないですか。

櫻井:僕は「絞り優先」です。

助川:自分は普段マニュアルで、時々「シャッター速度優先」です。シャッター速度優先は車窓からの風景を撮るときに使います。海沿いになったり、林の間を抜けたりと露出が目まぐるしく変わるとマニュアルでは大変。シャッター速度を1/60~1/125秒にしておけば、手前が流れて奥はピントが合い、疾走感も出ます。カメラの露出計は、たとえば暗めの色を明るく補正しようとするから、絞り優先だと黒いSLが急に来たときに、シャッター速度が遅くなりがちです。シャッター速度は変えずに絞りで明るさを調整していますね。

櫻井:P(プログラムオート)以外ならいいんじゃないですか。研究してみましょうよ。

助川:そういえば「PはプログラムではなくプロのPだ」と言った人もいました。(笑)

■Q 撮影後の加工(トリミング、色調補正)は行いますか?(埼玉県・国道楽さん)

櫻井:よほど消したいものが写った場合を除けばトリミングはしません。画面内で勝負したいですから。

助川:まったく同意見です。まず、フレーミングの良さはプロとしての矜持。色調補正はやります。

櫻井:僕もやりますね。

助川:「カメラが表現した色」と「僕が表現したい色」は同じではありませんから。フィルムの時代に覆い焼きとかやっていましたよね。

櫻井:そうそう、そのレベルですね。

助川:トリミングは必要だと思ったらやったほうがいい。次への反省につながりますから。一回一回学習すればいいんです。ちなみに、トリミングされた作品は画像の状態でわかりますよね。

櫻井:わかる、わかる。(笑)

助川:あと気をつけてほしいのは色味。最近、コンテストなどの写真の色味が派手になっていますよね。

櫻井:増えたよね、本当に。

助川:先日、南海電鉄の特急「ラピート」の写真を見たのですが、紺色の車体が紫色になっていたんです。しかも色が浮いている。自然なトーンや滑らかな階調が保たれているかどうか、ヒストグラムを見て滑らかなカーブを描いているかどうか、ちゃんと確認したほうがいいと思います。

◯櫻井 寛/さくらい・かん
1954年、長野県生まれ。鉄道員にあこがれ昭和鉄道高校に入学したが、在学中に鉄道写真にみせられ、日本大学芸術学部写真学科に進む。卒業後、出版社写真部勤務を経て、90年にフォトジャーナリストとして独立。93年、陸路海路のみで88日間世界一周。94年、『鉄道世界夢紀行』で第19回交通図書賞を受賞。近著『ぞっこん鉄道今昔』(朝日新聞出版)など著書多数。日本写真家協会会員、東京交通短期大学客員教授。

◯助川康史/すけがわ・やすふみ
1975年生まれ。秋田経済法科大学法学部卒業。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業後、鉄道写真家の真島満秀氏に師事。鉄道車両が持つ魅力だけでなく、鉄道をとりまく風土やそこに生きる人々の美しさを伝えることをモットーに日本各地の線路際をカメラを手に奮闘中。「鉄道ジャーナル」「鉄道ダイヤ情報」などの鉄道趣味誌や旅行誌の取材をはじめ、「JTB時刻表」「JR時刻表」の表紙写真を手がける。日本鉄道写真作家協会理事。

(聞き手・文/佐々木広人 取材協力/鉄道コム

※「アサヒカメラ」2月号から抜粋