鉄道写真家の櫻井寛氏(左)と助川康史氏
鉄道写真家の櫻井寛氏(左)と助川康史氏

■Q プロはどのようにして撮影ポイントを探すのですか?(福岡県・Mr.hiroさん)

櫻井:自分の足と目ですね。車で行っても止めて歩くべきです。ちゃんとした駐車場に車を入れて、ですよ。

助川:この間も近鉄奈良線を撮りに行ったんですが、駐車場がなかったので、地主さんを探して止めさせてもらいました。近くの農家の方に「この土地、おじさんのですか?」と聞いたら「あそこの家が地主だ」と。あいさつに行ったら「おまえみたいなやつは初めてだ」と言われました。大切なのはコミュニケーションですもんね。三脚を置く場合もそうですが。

櫻井:アサヒカメラ2月号の記事でも触れたんですが、海外では三脚を使う人はほとんど見かけないですよね。スイスの保存鉄道では線路脇で撮れるので、むしろ三脚は立てられません。海外との大きな違いは、日本はとにかく「鉄っちゃん」が多いこと。蒸気機関車を撮った際、海外では5m間隔で1列に撮影者がいるのですが、日本だと3列で後ろは脚立(笑)。

助川:日本だと電柱と電柱の間からしか撮れないこともありますからね。線路際に住宅があったりすると撮影ポイントが限られてくるんですよね。

櫻井:日本では密集しているだけに手持ちで撮影するテクニックが必要だと思います。そういうときはなるべく小型のカメラで。受け入れてもらいやすいですよ。

助川:逆に僕は三脚派なんですよ(笑)。構図が0.5mmでもズレるのも、シャッターを押してグッと下がるのもダメ。これはウチの事務所の「教え」なんです。

櫻井:僕は木村伊兵衛派なんで、なるべく軽い小型のカメラを使って手持ちで撮ります。

助川:まったく違う撮り方ですよね。自分は堅めです。

櫻井:土門拳派だ。

助川:どっちも正解なんです。スタイルの違いで。

櫻井:ちなみにプロ写真家は仕事を依頼されることが多いので、おのずと情報を得られることもあります。

助川:一般の方はとにかく友達を作るべきでしょう。友達100人できるかな(笑)。真面目な話、どこからか得た情報に接することもあるでしょうし、情報共有は大切です。コミュニケーションはしっかり取りましょう。

――そういえば、お二人もよく喋りますよね。

櫻井:それはいい写真を撮るためです。

助川:誰かが言っていましたが、自分の世界を表現するのに寡黙な人はいないと。

櫻井:寡黙なのは原稿を書くときだけですよ。

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薄暗い時間でのブレ対処法