神奈川「なんつっ亭」や富山「麺家いろは」、北海道「真武咲弥」など全国でも人気のお店がひしめく中、「第一旭」のシンプルなラーメンはどうしても見劣りするのではという心配もあった。しかし、蓋を開けてみると一番人気。「京都旅行で食べて美味しかったから来ました」「初めて食べたけど美味しかったので、京都に行ったら絶対に寄ります」といった声が続出し、改めて京都ラーメンの底力を知る機会になったという。

 イベントで意外な反響を得たことが、「再びお店をもっと広めていけるかもしれない」という期待につながった。その後、市場調査もかねて各地のラーメンイベントに出店するようになる。2017年には東京「大つけ麺博 大感謝祭」にも出店した。

2017年「大つけ麺博 大感謝祭」でふるまわれた「第一旭」のラーメン(筆者撮影)
2017年「大つけ麺博 大感謝祭」でふるまわれた「第一旭」のラーメン(筆者撮影)

 当時、「第一旭」が大つけ麺博に来ると聞いて本当にビックリしたことを覚えている。大つけ麺博を主催する実行委員会側も当初は出店を断られると考えていたが、何としても出てほしいという思いが募り、ほぼダメ元でオファーしたそうだ。この時、筆者が会場から生放送したネット番組に「第一旭」の清水勇吾氏(のちの新宿店の店長)が出演し、東京進出を目論んでいることをこう明かしていた。

「話半分で聞いてほしいんですけど、東京も考えてたりするんですよ」

 大つけ麺博で東京の人たちの反応を見て決めたいという思いからだったが、想像以上の反響に東京進出を決意。2017年末より出店の場所探しが始まった。いろいろと回って交渉したが、大量の豚骨と豚を炊く「第一旭」のスタイルは近隣住民への配慮などから、なかなか良い物件が見つからなかった。そんな中、ラーメン店の居抜き物件が新宿御苑前に見つかった。あまり一等地に開いてお客さんが来すぎるのも本末転倒ということもあり、新宿から少し外れたこの場所は都合が良いと即決した。

オープンしたばかりの「本家 第一旭 新宿店」外観(筆者撮影)
オープンしたばかりの「本家 第一旭 新宿店」外観(筆者撮影)

 こうして「本家 第一旭 新宿店」はオープンした。店長は「大つけ麺博」などの経験もある清水氏だ。昔からの「第一旭」ファンの年配の方を中心に、京都出身の人から新宿が地元だという人までたくさんの人が訪れている。「東京の人が思った以上に『第一旭』のことを知っているのが驚き」と清水氏は話す。

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相次ぐオファーを断る理由