静岡鉄道・駿遠線「軽便大旅行」の運転士を務めた中村学さんと乗車したキハD8。この日、筆者は中村さんと知己を得た。1964年3月25日新三俣駅
静岡鉄道・駿遠線「軽便大旅行」の運転士を務めた中村学さんと乗車したキハD8。この日、筆者は中村さんと知己を得た。1964年3月25日新三俣駅

 新藤枝駅を出てから2時間34分の旅だった。初めて見る沿線風景や軽便車両の魅力もさることながら、中村運転士さんから伺った昔日のエピソードがとても面白かった。これが駿遠線に足しげく9回も通うことになった起爆剤だったのだろう。

 鉄道写真撮影に必須なアイテムが、地図(路線図)と時刻表だ。さらに当該線区の列車ダイヤがあれば「鬼に金棒」で、上下列車の交換駅や、使用車両の運用までも把握できるからだ。中村さんからいただいた駿遠線の列車ダイヤが、その後の撮影行の強い味方になったことはいうまでもない。66年秋の訪問では、中村さんの愛車であるモノコックボディーの「スバル360」に便乗させてもらい、撮影地に送っていただくなど、たいへんお世話になった。

 静岡鉄道・駿遠線が全線廃止されたのは70年7月31日だった。

◯諸河 久(もろかわ・ひさし)
1947年生まれ。東京都出身。写真家。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。「諸河 久フォト・オフィス」を主宰。公益社団法人「日本写真家協会」会員、「桜門鉄遊会」代表幹事。著書に「都電の消えた街」(大正出版)「モノクロームの東京都電」(イカロス出版)などがあり、2018年12月に「モノクロームの私鉄原風景」(交通新聞社)を上梓した。

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諸河久

諸河久

諸河 久(もろかわ・ひさし)/1947年生まれ。東京都出身。カメラマン。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。「諸河 久フォト・オフィス」を主宰。公益社団法人「日本写真家協会」会員、「桜門鉄遊会」代表幹事。著書に「オリエント・エクスプレス」(保育社)、「都電の消えた街」(大正出版)「モノクロームの東京都電」(イカロス出版)など。「AERA dot.」での連載のなかから筆者が厳選して1冊にまとめた書籍路面電車がみつめた50年 写真で振り返る東京風情(天夢人)が絶賛発売中。

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