部品の管理はかんばん方式を採用。「Kanban」の文字がみえる(写真/猪狩友則)
部品の管理はかんばん方式を採用。「Kanban」の文字がみえる(写真/猪狩友則)

 組み立ての工程では、部品が必要なだけ箱に入って用意されていた。やはりトヨタのかんばん方式だ。必要な部品を必要なときに、必要なだけ供給するやり方。商品名、品番、置き場所など、商品に関する情報が記載されている商品管理用のカードが箱に刺さっており、使い切ったらそのカードをもとに部品を倉庫に取りに行く。使わない部品を過度に製造現場におかず、特定の部品を無駄に多く製造しないで済むやり方だ。いわゆるスーパーマーケット方式とも呼ばれている。Kanbanの文字が見られた。

■北イタリアだからこその製品の出来とつくり

 今回初めてイタリアに足を踏み入れた。シチリアやナポリのある南イタリアとは異なり、オーストリアやスイスとの国境やドイツとも近い北イタリアは工芸や工業を中心として栄えている。もちろんイタリアだけあってしゃれている人ばかりだが、街を歩いていても軟派なイメージはない。几帳面な人が多い。それは、バッサーノのオフィスでも、フェルトレの工場でも変わらない。しゃれているし笑顔も多いけれど、どこか真面目さを感じる。改めてマンフロット/ジッツオの製品を手に取ると、その北イタリアらしさが伝わってくるように思えてくる。

初期のマンフロットのロゴはスタンドを模したものだった。今の三脚を模したものと若干異なっている(写真/猪狩友則)
初期のマンフロットのロゴはスタンドを模したものだった。今の三脚を模したものと若干異なっている(写真/猪狩友則)

■日本からは、水の都ベネチアから

 バッサーノ・デル・グラッパへ日本から行くには、ベネチア(ベニス)から入るのがいい。ただ、飛行機の直行便はないので他国を経由することになる。今回は、ワルシャワ(ポーランド)で乗り継ぎベネチアの地に降りた。そこからバッサーノまでは車もしくは電車で1時間半ほど。

 バッサーノとフェルトレでの取材後、ベネチアの街に滞在した。水路が張り巡らされた街、建物がひしめき合い細い路地を抜けていく。スマートフォンの地図で自分の位置を確認しながら歩いていても簡単に迷ってしまうほどに入り組んでいる。10月末には、高潮が原因でかなりの部分が水没してしまったが、訪れたのはその数週間前。とはいえ、ドゥカーレ宮殿やサン・マルコ寺院、旧行政館に囲まれたサン・マルコ広場では潮位の変化によって、昼間は水たまりができていた。日の出前にカメラとマンフロットの三脚befree Advanced(ビーフリー アドバンス)を持って宿を出た。脚を上に畳み雲台部分だけ短くできるトラベル三脚だ。アルミ製で重さは約1.5キロ。付属のケースに入れ肩にかけ背中に回す。軽く感じるのはベネチアの街並みにみせられているからだけではないだろう。befreeのように脚が雲台側に畳め、長さを短くできる三脚はトラベル三脚と呼ばれる。今でこそ各社から発売されているが、ジッツオのトラベラーだ。

日の出前。係留されていたゴンドラ(手漕ぎの小舟)。対岸に見えるのはサン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂。構図を決め空が薄桃色になるのを待つのに三脚は不可欠(写真/猪狩友則)
日の出前。係留されていたゴンドラ(手漕ぎの小舟)。対岸に見えるのはサン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂。構図を決め空が薄桃色になるのを待つのに三脚は不可欠(写真/猪狩友則)

 ベネチアの街は美しい。チープな言い方になるが、言葉にするのは難しい。こんなところで写真を撮っていたら、下手くそになってしまうのではと思えるほど、どこでカメラを構えても絵になる。あちらこちらで立ち止まってスマートフォンで写真を撮っている人を見かける。そして、いまや観光地でカメラを首から下げているのは日本人だけではない。日の出前のベネチアでも、あちらこちらでカメラを据えた三脚を立てた人を見かける。当然マンフロットも少なくない。アカデミア橋を渡りサン・マルコ広場を抜け海岸まで行き、ゆっくりとbefreeを広げ日の出を待った。

(文/猪狩友則)

※「アサヒカメラ」2018年12月号から