映画ではこんなシーンがある。塞ぎこむ亘理に仲間たちが何度も言葉を投げかけるが、どれも響かない。だが、そんな亘理に愛想をつかすことなく、声をかけ続ける仲間たちの存在があった。大泉自身も、実際にくよくよ悩んだとき、友人の言葉に強く影響を受けたことがある。

 一浪して挑んだ大学受験のときのこと。希望していた大学受験にまたもや不合格。受かった大学に進学するか、もう一年浪人を続けるかの迷いがあった。身近には二浪して「東京のいい大学」に進んだ兄がいただけに、心が揺らぐ。悩み続けたある日、友達が言った一言で気持ちがスッキリした。

「最終的には時間が忘れさせてくれますよ」(撮影/写真部・片山菜緒子)
「最終的には時間が忘れさせてくれますよ」(撮影/写真部・片山菜緒子)

「そいつに『いろいろ俺たちに相談するけど、お前の中では決まっているんじゃないの』と言われて、ハッとした。自分でも『どこかで前を向かなきゃ』とは思っているし、答えは既に出ていて、背中を押してくれる人に出会うのを待っているところがある。それに、最終的には時間が忘れさせてくれますよ」 

 芸能界でキャリアを重ねる中で、いろんな言葉をかけてもらった。それでも、10代のころの、仲間からの言葉がずっと残っている。(取材・文/AERA dot.編集部・福井しほ)

著者プロフィールを見る
福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

福井しほの記事一覧はこちら