又吉と同じお笑い芸人が書いた松本人志の「遺書」とは違って、「火花」は芥川賞も受賞した本格的な文学作品。2011(平成23)年に俳優の水嶋ヒロが「齋藤智裕」の名前で執筆した「KAGEROU」がポプラ社小説大賞を受賞。同年7位のベストセラーになった。タレントから小説やエッセイを執筆、それが賞を受賞した後にベストセラーになるというのは、ヒット作品の方程式になっている。

 最近では、本の売れ方も変わってきている。特に、影響力を強めているのが2004年に新設された本屋大賞だ。

 ここ3年でも、本屋大賞を受賞した宮下奈緒の「羊と鋼の森」が2016(平成28)年に8位、恩田陸「蜂蜜と遠雷」が2017(平成29)年の2位、辻村深月「かがみの狐城」が2018(平成30)年の12位になった。

 情報があふれるなかでヒット作の変遷も激しいが、絵本は一度ヒットすると安定した部数が売れる。そのなかでも驚異的な売れ行きなのが、かがくいひろし「だるまさんが」(ブロンズ新社)シリーズ。いまや幼児向け絵本の定番として定着し、2014(平成26)年から2018(平成30)年まで19位、15位、17位、19位、19位と5年連続のトップ20入りを記録している。

 一方で、SNS全盛時代ならではのヒットもある。技術評論社からの「古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 古生代編」(土屋健・著、群馬県立自然史博物館 ・監修)は定価が3456円にもかかわらず、サイズ感を直感できるように編集が工夫されていることがSNSで話題となり、発行部数は6万部を超えた。SNS時代ならではのヒット作だ。

「200万部を超えるヒットとなった『君の膵臓をたべたい』(双葉社)も、小説投稿サイトに投稿されたものが話題になって書籍化されたものでした。ベストセラーの生まれ方も多様化しています」(川瀬氏)

 平成も残りわずか。次の時代にはどんなベストセラーが生まれ、どのように世相を彩るのだろうか。(AERA dot.編集部・西岡千史)

次のページ
【表】1999~2008年のベストセラーは?