白石さんは、強気にそう言い切る。ここ数年、意外にもフリュー社ではプリクラ機のプレイ回数は、落ち込むどころかほぼ横ばいだという。また、同社の2019年3月期第2四半期の決算によれば、プリントシール事業の前年比売上の5.9%増だった。なぜか。

 2000年代、携帯電話に「写メ」機能が付き、画像を共有しあう文化が生まれた。プリクラ各社もそこに目を付け、プリクラ画像を携帯に送信できるサービスを開始。フリューも2003年に会員登録すれば使える共有サービス「ピクトリンク」をリリースした。地道に会員を増やし、2011年に製造した「LADY BY TOKYO」のヒットを皮切りに、会員が急増。2017年10月には会員は1300万人を突破した。SNSの流行に合わせて、ピクトリンク内でも交流ができるような機能を付けたり、オンラインの「プリ帳」としての機能を充実させた。

あらゆるところで目にした「姫系」の文字はプリクラにも
あらゆるところで目にした「姫系」の文字はプリクラにも

 そして、近年では「インスタ映え」の恩恵も受けているという。

■女子高生の「遊び」の見つけ方

 同社のプリクラ機「SUU.」はシートが半透明タイプになっている。女子高生の間で、これを空に透かして「インスタグラム」に投稿する新たな“映え”が登場した。ただ撮って終わるのではなく、「プリクラそのものを撮影してSNSに投稿するまで」が主流のようだ。

人気機種「SUU.」と「PINKPINKMONSTER」
人気機種「SUU.」と「PINKPINKMONSTER」

 また、「PINKPINKMONSTER」はプリ機の外装をすべてピンク色に統一し、これまで欠かすことのできなかったモデルの写真を取り払った。外装からはどの程度盛れるのかがイメージしづらく挑戦的にも思えたが、一つのフォトスポットとして話題に。ハッシュタグ「#pinkpinkmonster」で検索すると、モデルさながらのポージングを決める女の子の写真もあった。

「女子高校生は遊び方を見つけるのがとにかく上手です。こちらから押し付けるのではなく、箱を用意すれば考えもつかないような遊び方をするので驚きです」(白石さん)

 この「押し付けではない」のもポイントだ。業界最大手の同社とて、過去には失敗してきた。たとえば、プリ機の中でお立ち台をせりあげたり、髪や表情に動きを出そうと風を吹き付けたりと「遊び」を導入したが、実際にはお立ち台に上っての撮影がかえって不向き、風で髪型が崩れる、目がカラカラに乾くといった酷評のラッシュ。同社が作った「遊び」は、ただの「押し付け」に過ぎなかったのだ。

 しかし、当時も今と同じくヒアリングを実施していた。なのに、なぜダメだった?

次のページ
犯した失敗