ヒアリングでは漠然と「目がさみしい」という子もいれば、「肌の黄色味が気になるからもう少しふんわりした色白にしてほしい」と指摘する子もいた。さらに、こんな容赦ない声も。

「涙袋がもっとほしい」
「このプリだとカラコンが浮いちゃう」
「目をもうちょっとパッチリさせてくれたらいいな」
「これは目がパキっとしすぎ」
「中村里砂ちゃんみたいな目になりたい」

 中村里砂ちゃんとは、ファッション雑誌「LARME」などで活躍する人気モデルで、大きな目がチャームポイントだ。聞けば聞くほど「目」へのこだわりが強いことが伝わってくる。

2010年春から2015年冬のトレンド変遷がわかる
2010年春から2015年冬のトレンド変遷がわかる

 同社の調査によると、目へのこだわりが見え始めたのは2006年頃。写り重視の「盛れる」プリクラが好まれ、“デカ目”、“詐欺プリ”という言葉が使われ始めた。そこで同社のプリクラ機「姫と小悪魔」には一眼レフの高画質カメラが、また「美人―プレミアム―」にはつけまつげやカラコンを繊細に写し出す“美人目ヂカラ”機能が搭載された。2011年には詐欺プリから“ナチュ盛り”へと変化。AKB48などのアイドルが国民的人気となり、「ナチュラルだけど可愛い」がトレンドに。また、イメージモデルもこれまでのギャルモデルから外国人モデルに移り変わるなど、ギャル色も薄れ始めた。その後、2014年にはただ目を大きくするのではなく、パーツや輪郭など事細かに調整する機能が搭載される。全員が同じ盛り方をするのではなく、それぞれ自分好みの“盛れ感”を手に入れられるようになった。

 とはいえ、ただ目を大きくするだけならプリクラである必要はない。いまやスマホアプリを使えば目を大きくできるのはもちろん、肌質だって変えられる時代だ。1回400円を払って“一発勝負”のプリクラとは違い、何度でも撮り直すことだってできる。

似顔絵を作るプリントシール機もあった
似顔絵を作るプリントシール機もあった

 一般社団法人日本アミューズメント産業協会によると、プリントシール機の売り上げは1997年に1000億円を超えるピークを迎え、翌年には417億円に落ち込んだ。その後、増減を繰り返しながらもここ数年は220億円台を推移している。冒頭で述べた大手メーカーが破産開始をした際に朝日新聞デジタルなどが「プリントシール機大手が破産申請 プリ帳→スマホ時代で」と報じたように、スマホ化の影響も囁かれた。

 だが、この状況をポジティブに捉える向きもある。

「スマホアプリは脅威ではありません。むしろ、追い風ですね」

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スマホの恩恵