ここ数年では、さかなクンとのコラボ演奏曲『Paradise Has No Border』がCMで起用されたことにより、全国の小学生や中学生のブラスバンド部がこぞって楽曲をコピーするなど、話題を集めた。また、今回のシングルでライブバージョンとして収録されている『砂の丘~Shadow on the Hill~』は、熱狂的な応援スタイルで知られている千葉ロッテマリーンズ応援団のチャンステーマとして今年から使用されている。試合の中盤や終盤でこの曲が流れると、球場の盛り上がりは最高潮を迎える。05年に発表された曲だが、子供から大人まで幅広い世代から愛される曲になった。

「自分が作曲をして、スカパラメンバーとともに作り上げた曲が、自分たちの手を離れてから何年かのちに、千葉ロッテマリーンズを愛するファンの人たちが、愛するチームを応援するために僕らの曲を使ってくれるなんて、本当にミュージシャン冥利に尽きますね」(加藤)

 来年にはデビュー30周年を迎える。衰えはまったくなく、ステージに上がれば圧倒的なライブパフォーマンスを見せる。今後は、新曲を携えて宮本浩次も出演するライブも予定されているという。節目の年をまもなく迎えるにあたり、スカパラはこれからどこに向かうのか。

「よく、バンドを長く続ける秘訣を聞かれますけど、簡単なこと。毎日が一期一会で、ライブでは目の前にいるお客さんとつながろうと演奏する。すると、30年経っていた。これは今後も変わらないし、ライフワークなのだと思う」(加藤)

 茂木も同じ考えだ。

「新曲に<周回軌道の小さな世界>という歌詞があります。でも、スカパラは周回軌道の外側にいて、非日常的で、ワクワクすることをやっている。それが一番スカパラらしい」

 谷中は、作家の星新一のエピソードを引きながら、最後に少し哲学的な話をした。

「星新一さんがこんなことを書いていたんです。子供のころ、父親に『光ってものすごく速いんだよ』と自慢げに言ったら、父親が『じゃあ、人間の頭の中はどうだ。俺が遠い星のことを考えたら、光より先にそこに行っているよ』って。そんなことを言える大人になりたいね」

 ジャマイカ生まれの「スカ」という音楽を、日本であまり知られていない頃から演奏し、「トーキョースカ」として一つのジャンルを築き上げた。その音楽に出会った人は、これまでにない世界を知った。スカパラの歩みは、これからも変わらず続いていくだろう。世界中の人々を“別のどこか”に連れて行くために。

(構成/AERA dot.編集部・西岡千史 撮影/写真部・片山菜緒子)