ニューシングル『明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次』は、そんなスカパラの思いをストレートに歌詞に込めた。<明日のこと考え過ぎて もう今日の勇気とかないのか?><それがオマエという時限装置なんだろ? 他の誰なんだ?>と、日常の世界で小さくまとまっている人間を鼓舞している。歌詞は谷中が書いた。

「僕らの世代の情熱を若い世代に伝えていきたい。そんな想いで書きました。僕が中学生や高校生だったころに憧れた音楽や映画は、とても情熱的だった。そういうものに追いつこうとして一生懸命やってきて、ようやく今に至った。その情熱の“たいまつ”を次の世代にも引き継いでもらいたいなと」(谷中)

 谷中いわく、宮本の歌のスタイルは「日本語を日本語として歌い、日本語でロックをする」。曲調に合わせて日本語を英語のように発音することはしない。だからこそ、歌詞の強さが聴く人に伝わるのだという。茂木は言う。

「この曲のメロディラインが強くて美しいので、それを受け止めてくれるボーカリストと出会えたことは絶妙で、これ以上ない出会いでした」

 ギターの加藤隆志は71年生まれで、現メンバー9人の中で最も若く、唯一の70年代生まれだ。この曲を宮本浩次のボーカルでつくれたことの意義を「宮本さんの声があったから、僕らの世代からのメッセージが発信できた」と話し、「スカパラと同世代のバンドは、だんだん少なくなってきた。そのなかで、今年30周年を迎えたエレファントカシマシは、一緒に走り続けてきた同志みたいな存在」とも言う。

 では、スカパラが伝えたかったメッセージとは、どんなものだったのか──。

 89年にデビューしてから、精力的にライブをこなした。呼ばれれば世界中のどこにでも行く。それがスカパラのスタイルだ。これまでライブのために出かけた国の数は30以上。なかでも印象に残っているのが、エストニアの首都タリンの国際ロックフェスティバルに参加したことだという。デビューしてすぐの90年ごろだった。

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ロシア統制下のエストニアで犯した失敗