写真左から加藤隆志、谷中敦、茂木欣一(撮影/写真部・片山菜緒子)
写真左から加藤隆志、谷中敦、茂木欣一(撮影/写真部・片山菜緒子)

 圧倒的なライブパフォーマンスで、日本にとどまらず世界で活躍する東京スカパラダイスオーケストラ。来年でデビュー30周年を迎えるが、驚くべきことに一度も活動を休止したことがない。しかも、現メンバーは9人。大所帯で休まず活動を続けてきたことに、ドラムの茂木欣一も「世界的に珍しいと思う」と話す。

 その原動力について、谷中敦(バリトンサックス)は「失敗を続けても、突き進んで行けばそこに道ができる」との信念にあると語る。その想いを込め、11月28日にはゲストボーカルにエレファントカシマシの宮本浩次を迎えたシングル『明日以外すべて燃やせfeat.宮本浩次』を発売した。

 そんなスカパラの歩んできた道とは、どのような道だったのか。路上ライブ、メンバーの死、海外への進出──。自由に生きる大人たちが語る「人生」と「次の世代」への伝言。

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 気がついたら、デビューから29年経っていた。その間、1995年にバンドのフロントマンを務めたクリーンヘッド・ギムラ、99年にはドラムの青木達之の死という悲しい出来事もあった。それでも、一度も活動休止をしたことはない。谷中はこう話す。

「僕は『ベスト病』と呼んでいるんです。ベストを尽くさないと明日が見えてこない。めったにないことだけど、ライブが終わった後に落ち込むこともあるんですよ。その時は、『ベストを尽くせなかった』とちょっと落ち込むこともある。そんな時はやるせなさが残って、悲しい。だから、いつも心を振り切ってライブをやる。それができたらみんなハッピー。命を燃やしながら続けてきたら、ここまで続いていたということです」

 ドラムの茂木欣一は、青木が亡くなった後の2年間サポートを務め、2001年に正式加入した。その時に、スカパラの持つ「ベスト病」に驚かされたという。

「このバンドは振り返りの作業をしない。好奇心旺盛で、いつも何かを考えて『次はどんな景色が見えるんだろう』と楽しみにしている。メンバー全員が、全身全霊で『前に進もう』と。せっかちなんですよね。でも、それがスカパラらしい」

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新曲に込めた次世代へのメッセージ