こう話しながら、畠山さんは記者に空手の動きを真似た動作を見せてくれた。その手の動きがしなやかだった。さすが新体操で美しさを叩き込まれた畠山さん。お世辞抜きにエレガントだった。

「本当ですか? 全く意識していません」

 畠山さんは笑いながら否定したが、動作を魅せることについて鍛えられていると感じさせられた。その理由が垣間見えたのが、畠山さんが語ってくれた新体操強豪国ロシアでの生活のエピソードだ。ロシア人コーチからこう指導を受けたという。

畠山愛理さん(撮影/大塚淳史)
畠山愛理さん(撮影/大塚淳史)

「半分ロシア、半分日本という生活を7年間、続けました。ロシアで言われたのが『自分が周りからどう見られているのか意識しなさい』ということです。あと『別に恋愛はしてもいいですよ』とは言われました。新体操は美しさを競う競技なので、恋愛すれば女性は綺麗になるということもあると思います。表現の幅を広げる意味でも必要かもしれません」

 2012年のロンドン五輪と16年のリオデジャネイロ五輪と2大会続けて出場。それぞれ団体決勝で7位と8位だった。五輪でのプレッシャーについて振り返る。

「ロンドンではメダルを期待されてなかったのでプレッシャーはなかった。でも、7位に入賞したことで『お、入賞できるようになった。じゃ、メダルを狙えるね』という周囲の感じが、少しずつ上がってきました。実際、リオでは完全にメダルを狙いました。その1年前の世界新体操選手権で、メダルも取っていた(団体種目別リボンで40年ぶりとなる銅メダル)。あれ?いつもと違うとはなりましたが、五輪期間中はSNSとか見ないようにし、そこまでメダルのプレッシャーは感じませんでした」

 2年後には東京五輪が迫るが、どのように関わっていたいか。

「一番は伝えるお仕事で関わりたいのが本音ですけど、今のままでは、まだ務まらないかなと思っています。選手を引退しましたけど、選手時代と同じように課題をひとつひとつクリアしていって、自信をもって選手の活躍を伝えれるように、ところまでいきたい。もちろん努力します」

 一方で、後輩たち、通称"フェアリージャパン"には温かい眼差しを向ける。

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選手に「メダル」と言わない理由