【写真A】太陽を画面のすぐ外に置いてフレアを生かす
<br />被写体の距離、カメラの位置:近景から中景、ウエストレベル/天候、時間、光線状態:晴れ、午前5時30分、逆光/カメラ:キヤノンEOS 5D MarkIV/レンズ:キヤノンEF50ミリF1.4 USM/絞り、シャッター速度:f2、400分の1秒/撮影感度:ISO100/ピント位置:画面中央付近の穂/ホワイトバランス:太陽光/フィルター:なし/仕上がり設定:風景モード/撮影地:長野県・高ボッチ高原(写真/福田健太郎)
【写真A】太陽を画面のすぐ外に置いてフレアを生かす
被写体の距離、カメラの位置:近景から中景、ウエストレベル/天候、時間、光線状態:晴れ、午前5時30分、逆光/カメラ:キヤノンEOS 5D MarkIV/レンズ:キヤノンEF50ミリF1.4 USM/絞り、シャッター速度:f2、400分の1秒/撮影感度:ISO100/ピント位置:画面中央付近の穂/ホワイトバランス:太陽光/フィルター:なし/仕上がり設定:風景モード/撮影地:長野県・高ボッチ高原(写真/福田健太郎)

 肌にふれるひんやりとした空気に季節の移ろいを感じながら、風景を撮る。日常から解き放たれた心の軽やかさ。旅先での時間の流れとさまざまな出会いが胸に刻まれ、風景の印象をより深くする。美しい紅葉がドラマチックに目の奥に焼きつけられる。「アサヒカメラ」10月号では秋の風景の撮り方を特集。ここでは、写真家・福田健太郎氏による「秋穂の輝き」の撮影方法を紹介する。

【太陽を外す場合と入れる場合で印象はぐっと変わる! 記事に出てくる他の写真の詳細はこちら】

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 ひそやかに咲く野草をモチーフとした秋草模様が愛されるように、秋の風景撮影で、レンズを向ける被写体が紅葉だけではもったいない。

 情緒あふれる繊細な草花と向き合うことも、きっと私たちの心を豊かにしてくれるはずだ。本章では、どこにでも見られるイネ科のススキをはじめとした、秋穂の輝きに注目した。 

 被写体がもっとも輝きを強めるのは逆光を受けたとき(被写体みずからが発光すれば別だけれど)。さらに、朝夕の暖色、日中の白色など、時間帯によって異なる光の色も生かしていこう。

 レンズの選択は、望遠レンズの引き寄せ効果やボケ効果を利用した撮影もよいが、今回は広角と標準の単焦点レンズを使って撮影した写真を掲載している。

 写真Aは、朝の光が差し込むススキの風景。撮影地の長野県・高ボッチ高原は、東の空が白み始める夜明けのころ、諏訪湖を取り囲む街の明かりがきらめき、雲海が流れ、シルエットの富士山を写せる絶景写真の撮影ポイントとして知られている。

 秋の季節が撮影のチャンスで、私が訪ねたときは条件が合わなかったが、高原に広がるススキが風でかすかに揺れ動いていた。秋の優しい風景が心に触れた。

 一面のススキ野原に包まれている印象を誘いたくて、離れた場所からではなく、草むらに潜り込んで、ススキを目線と同じ高さから見つめた。すると、朝の光に透けた穂の輝きのほか、長細いラインを描く葉も照り輝き、さざ波立つようなリズミカルな動きが目に留まった。 

使用レンズは、標準の50ミリ。ファインダーをのぞきながら、手動でピントリングを回転させて、どう写し出されるのかを探った。

 ピントは画面中央、少し奥にある穂に合わせ、レンズ開放付近の明るい絞り値にセットし、前ボケ効果を強めた。さらに、優しい朝の光に包まれた秋の雰囲気を出したくて、画面上のすぐ外に朝日を置き、弱いフレアを画面内に入れ、それによって色彩とトーンが弱まるようにした。

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遠近感と広がり感