【写真A】水面をカメラに正対させ、すべてにピントを合わせる
<br />被写体の距離、カメラの位置:橋の上から3メートルほど先、ウエストレベルから俯瞰/天候、時間、光線状態:小雨、午後1時30分、フラット光/カメラ:ソニーNEX-7/レンズ、撮影焦点距離:ソニーE 55 ~ 210ミリF4.5 ~ 6.3 OSS、61ミリ(35ミリ判換算91ミリ相当)/絞り、シャッター速度:f10(絞り優先AE、+0.3補正)、2秒/撮影感度:ISO100/ピント位置:画面中央の落葉/ホワイトバランス:太陽光/フィルター:PLフィルター/仕上がり設定:風景モード/撮影地:静岡県伊豆市(写真/福田健太郎)
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【写真A】水面をカメラに正対させ、すべてにピントを合わせる
被写体の距離、カメラの位置:橋の上から3メートルほど先、ウエストレベルから俯瞰/天候、時間、光線状態:小雨、午後1時30分、フラット光/カメラ:ソニーNEX-7/レンズ、撮影焦点距離:ソニーE 55 ~ 210ミリF4.5 ~ 6.3 OSS、61ミリ(35ミリ判換算91ミリ相当)/絞り、シャッター速度:f10(絞り優先AE、+0.3補正)、2秒/撮影感度:ISO100/ピント位置:画面中央の落葉/ホワイトバランス:太陽光/フィルター:PLフィルター/仕上がり設定:風景モード/撮影地:静岡県伊豆市(写真/福田健太郎)

 肌にふれるひんやりとした空気に季節の移ろいを感じながら、風景を撮る。日常から解き放たれた心の軽やかさ。旅先での時間の流れとさまざまな出会いが胸に刻まれ、風景の印象をより深くする。美しい紅葉がドラマチックに目の奥に焼きつけられる。「アサヒカメラ」10月号では秋の風景の撮り方を特集。ここでは、写真家・福田健太郎氏による「落ち葉の写し方」を紹介する。ぜひ、撮影の「引き出し」にしてほしい。

【「落ち葉」の撮り方でこんなに変わる! 記事に出てくる他の写真の詳細はこちら】

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 季節の移ろいをはっきりと感じさせる落葉の風景に哀愁の感情が揺さぶられるのは、ごく自然なことだろう。

 写真Aは、小雨降るフラットな弱い光に包まれるなか、橋の上から俯瞰撮影したもの。水深は浅く、石の上に落ち葉がうまい具合に点在していた。

 水面はどこも一定の距離で、このように奥行きのない風景に対しては、レンズの絞りを特に深く絞り込まなくても画面全体をシャープに写し出すことができる。

 しかし、このときは、静寂さを誘い、落ち葉を目立たせたいねらいから、低感度に設定して絞り込み、シャッター速度を2秒と遅くし、水の流れを滑らかな動感描写へと変化させた。 

 紅葉といえばカエデだが、落ち葉の風景といわれれば、イチョウを思い浮かべる人が多いだろう。

 剪定(せんてい)に強く、街路樹としてたくさん植えられている。大きく育ち、火に強い性質があるため、神社仏閣、学校でもよく見られる。イチョウはいっせいに落葉し、黄色の絨毯を敷き詰めたようなフォトジェニックな風景が現れる。

【写真B】霧の白バックに黄色い葉を溶け込ませる
<br />被写体の距離、カメラの位置:中景、アイレベル/天候、時間、光線状態:濃霧、午前10時、フラット光/カメラ:キヤノンEOS 5Ds R/レンズ、撮影焦点距離:キヤノンEF70 ~ 200ミリF4L IS USM、90ミリ/絞り、シャッター速度:f8、2分の1秒/撮影感度:ISO200/ピント位置:画面中央付近の黄葉/ホワイトバランス:オート/フィルター:なし/仕上がり設定:ディテール重視モード撮影地:鳥取県・大山、鍵掛峠周辺(写真/福田健太郎)
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【写真B】霧の白バックに黄色い葉を溶け込ませる
被写体の距離、カメラの位置:中景、アイレベル/天候、時間、光線状態:濃霧、午前10時、フラット光/カメラ:キヤノンEOS 5Ds R/レンズ、撮影焦点距離:キヤノンEF70 ~ 200ミリF4L IS USM、90ミリ/絞り、シャッター速度:f8、2分の1秒/撮影感度:ISO200/ピント位置:画面中央付近の黄葉/ホワイトバランス:オート/フィルター:なし/仕上がり設定:ディテール重視モード撮影地:鳥取県・大山、鍵掛峠周辺(写真/福田健太郎)

■絞りのコントロールで印象を変える

 落ち葉の風景でムードを高めるには夕方の光を浴び、暖色に染まるタイミングで見つめるとよく、逆光を選ぶと輝きを増す。写真Bは、まさにオススメの時間帯、光線状態で撮影した一枚。段々になった傾斜地にたくさんのイチョウが植えられ、12月中旬に訪ねると、フカフカの落ち葉がびっしりと敷き詰められていた。

 日陰のイチョウの幹はシルエットに描写され、連なった形が際立った。画面全体をシャープに、リアルに再現したかったので、ピントは画面左手前、木の根元ラインの落葉に合わせてf16まで絞り込んでいる。そうすることによって被写界深度が深くなり、このように奥行きのある場面でも画面全体にピントを合わせられる。

 PLフィルターを使い、白っぽい落ち葉の表面反射をできるだけ抑え、黄色を鮮やかに出した。

【写真C】画面の手前、一部だけにピントを合わせる
<br />被写体の距離、カメラの位置:中景から遠景、ローポジション/天候、時間、光線状態:晴れ、午後4時、逆光/カメラ:キヤノンEOS 5D MarkII/レンズ:タムロンSP90ミリF2.8DiMACRO1:1 VCUSD/絞り、シャッター速度:f2.8(絞り優先AE、+0.3補正)、500分の1秒/撮影感度:ISO200/ピント位置:画面下3分の1ライン/ホワイトバランス:日陰/フィルター:なし/仕上がり設定:風景モード/撮影地:東京都新宿区・新宿御苑(写真/福田健太郎)
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【写真C】画面の手前、一部だけにピントを合わせる
被写体の距離、カメラの位置:中景から遠景、ローポジション/天候、時間、光線状態:晴れ、午後4時、逆光/カメラ:キヤノンEOS 5D MarkII/レンズ:タムロンSP90ミリF2.8DiMACRO1:1 VCUSD/絞り、シャッター速度:f2.8(絞り優先AE、+0.3補正)、500分の1秒/撮影感度:ISO200/ピント位置:画面下3分の1ライン/ホワイトバランス:日陰/フィルター:なし/仕上がり設定:風景モード/撮影地:東京都新宿区・新宿御苑(写真/福田健太郎)

 同じく、夕方の光で撮影した写真Cは、カメラの位置をローポジションに置き、水平にレンズを向けての撮影で、画面に奥行きを生み出している。レンズの焦点距離は90ミリで、絞り開放のf2.8を選択。ピントの幅はごく浅く、一面にしか合っていない。低いカメラ位置と画面手前のピント位置によって、背景に広がる風景をぼんやりと伝えた。ホワイトバランスは「日陰」に設定して赤みを増した。ボケ描写と深い暖色の組み合わせで晩秋を語らせている。

(写真・文/福田健太郎)

「アサヒカメラ」10月号から抜粋