鮮やかな紅葉の山の写真は、なぜ平面的になる? 写真家の「足す」フレーミング

福田健太郎dot.#アサヒカメラ

被写体の距離、カメラの位置:中景から遠景、アイレベル/天候、時間、光線状態:快晴、午前9時15分、順光/カメラ:キヤノンEOS 5D MarkIV レンズ、撮影焦点距離:キヤノンEF24~70ミリ F4L IS USM、70ミリ/絞り、シャッター速度:f9、50分の1秒/撮影感度:ISO100/ピント位置:画面中央の紅葉山腹/ホワイトバランス:太陽光/フィルター:PLフィルター/仕上がり設定:風景モード/撮影地:長野県小谷村・栂池自然園(写真/福田健太郎)

 肌にふれるひんやりとした空気に季節の移ろいを感じながら、風景を撮る。日常から解き放たれた心の軽やかさ。旅先での時間の流れとさまざまな出会いが胸に刻まれ、風景の印象をより深くする。美しい紅葉がドラマチックに目の奥に焼きつけられる。そんな光景を前に「うわぁー」「すごーい」と、喜びの声をあげて舞い上がり、シャッターを切る。

 ところが、自宅に帰って写真を見ると、「あれ?こんなはずじゃなかった」。しっかりと撮影したはずなのに、あのときの感動した風景が写っていない。そんな経験をした人は多いはず。そもそも風景の撮影には「正解」など存在しない。「こうしなければならない」というつもりはまったくないし、むしろ、そういう型にはまった風景写真の風潮を取り払いたいという気持ちがある。「アサヒカメラ」10月号では撮影データから秋の風景の撮り方を特集。ここでは、写真家・福田健太郎氏による「彩り鮮やかに紅葉する山の写し方」を紹介する。ぜひ、撮影の「引き出し」にしてほしい。

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 よくあることだが、スケールの大きい、彩り鮮やかな紅葉の山を写すと、「ただ写っている」だけの平面的な写真に陥りがちだ。

 こんな彩り鮮やかな紅葉の山に対しては、仕上がり設定を「風景」や「VIVID」「紅葉」といったモードにすると、紅葉や青空の鮮やかさが増し、撮影者の脳裏に焼きつけられたイメージと合致しやすい、印象色で再現できる。

 写真は、北アルプスの中腹、標高約1900メートルに位置する栂池(つがいけ)自然園(長野県小谷村)。山さん麓ろくからゴンドラとロープウェイを乗り継いで行くと、この日は紅葉狩りを楽しむにはよい天候だった。

 午前9時ごろは、まんべんなく光が当たる順光の風景で、陰影が現れにくい半面、被写体そのものの色を再現しやすいのが特徴だ。インパクトの強い風景写真を求めるには不向きだが、雄大な山のおおらかさを伝えるには絶好のよい光だった。

 順光なので、PLフィルターの効果は大きくはないが、筆で払ったような白い雲が浮き上がるように、さらにクマザサなどの葉の表面に発生した反射を抑えて少しでも色を濃く再現できるように、PLフィルターの回転を調節した。

■「引く」ではなく「足す」フレーミングを楽しむ

 肝心のフレーミングは感覚的なことだが、“切り取る”ではなく、“取り入れる”ことがポイント。

 紅葉する雄大な山のおおらかさと、秋の気配を誘い出したく、画面真ん中ラインの山岳と、紅葉する山腹をメインに、安定感と奥行き感を出すために手前の湿原を若干取り入れ、澄みわたる秋の空も紅葉する山の存在が薄まらない程度に入れている。

 ズームレンズを使うと、ついつい被写体を絞って、引き寄せたくなる。画面構成は「引き算」といわれるけれど、切り取る意識が強すぎると、切迫感が生まれ、息苦しい印象を与えかねない。それがよい方向に作用することもあるが、ときには「足す」フレーミングを楽しんでみよう。その場にたたずみ、五感をとおして感じた風景の気配を届けることを大切にしたい。

(写真・文/福田健太郎)

「アサヒカメラ」10月号から抜粋

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