ただ単にコスプレしているだけかと思いきや、そうではない。忍者ドライバーは選抜制なのだ。やりたくても、選ばれなければ忍者にはなれない。小関さんは、同社の8営業所各々にいる忍者ドライバー2人のうちの1人。小関さんは選ばれた後、忍者の本場・伊賀で、1日修行してきた。そこで水に浮いたり、手裏剣を投げたり、滝に打たれたり、綱を渡ったりと、本格的な訓練を受けた。その勇姿はユーチューブの同社のチャンネルで見られる。

 タクシードライバー歴4年目の小関さんに、なんで忍者になったのか理由を聞いた。

「タクシー運転手は日々売り上げを稼いでいると、同じことの繰り返しで、どこかしら面白みが無くなってきます。そこにこういう企画があるからやってみないかということで、手を挙げました。『ヒットしたら、テレビ局からオファーがくるよ』と言われたのにも惹かれました。目立ちたがり?そうです(笑)。ご覧の通り、顔は全然出ないですが」

 残念ながら、大人はノーリアクションが大半らしいが、それでも子供は、近くを通ると「キャー!忍者だ!」と言い、「テンション上がりますね!」(小関さん)。

 そう言っていると、交番の前を通った。記者が、警察には止められないのか聞くと、眞壁さんは「特に何事もなく、スルーされますね(笑)」という。小関さんは、忍者姿まで、空港に乗客を送り届けたこともあるという。

「SP風タクシー」では、SPに扮したドライバーが、乗客ために身を呈して守ってくれるかもしれない。ただ、「実際は弱いです」(眞壁さん)と説明している(撮影/大塚淳史)
「SP風タクシー」では、SPに扮したドライバーが、乗客ために身を呈して守ってくれるかもしれない。ただ、「実際は弱いです」(眞壁さん)と説明している(撮影/大塚淳史)

 サービスを始めた当初はインバウンド対策としても期待した。海外のメディアからも注目され、何度か取り上げられた。ただ、現状としては客の99%が日本人。主に、飲み会や結婚式二次会などイベントでこのサービスを利用する。同様のサービスである「SP風タクシー」では、今度、結婚する花嫁をエスコートするという案件がきており、詳細を詰めている。

「SP風タクシー」のドライバーは、岡田准一主演のドラマ「SP」や木村拓哉主演のドラマ「ボディガード」を見てSPについて学ぶという(撮影/大塚淳史)
「SP風タクシー」のドライバーは、岡田准一主演のドラマ「SP」や木村拓哉主演のドラマ「ボディガード」を見てSPについて学ぶという(撮影/大塚淳史)

 「忍者でタクシー」や「SP風タクシー」には、インバウンド対策だけでなく、同社が提供する定額サービスの利用促進の狙いもある。例えば、横浜市港北区から羽田空港まで利用する場合、どこから乗っても定額の5200円で、4人で乗れば1人当たり1300円と手頃な値段。ただ、日本人も外国人観光客もあまり知らないという。忍者やSPのサービスを通じて、定額サービスの認知も期待する。

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三和交通の面白い取り組みはこれらだけでない