「ボックスで荷物を運ぶ場合、距離数に応じて値段が変わる仕組みになっています。計算すると、正しくは8万1690円でした。差額の10万3635円が水増し分となります」(槙本さん)

 YHCの水増し請求は、今年5月にも確認されている。高知県室戸市から愛媛県西条市への引っ越しで、荷物量は5トンで見積もりされていた。ところが、実際の荷物量はボックス1本。水増し料は約10倍だ。

 これだけではない。見積書にはオプションとして、道路が狭くてトラックが家の前までに車を付けられない時に、小さなトラックなどでピストン輸送する時に使う「横持ちサービス」が集荷時と搬入時に付けられていた。計2万円の上乗せだ。ところが、実際に横持ちサービスは行われていなかったという。

「私が実際に現場に行って引っ越しの様子を確認したとき、家の前までトラックが来て、横持ちは行われていませんでした。引っ越し現場の担当者は、見積書の内容で横持ち料金が含まれていることも知っているはずです。それでも修正しないということは、組織ぐるみで水増しをやっているということです」(槙本さん)

 槙本さんは、四国法人営業支店長になるまでは、引っ越しの現場で作業をしていて、高知支店長もしていた。

「私が現場で働いていた時にこんな“ボッタクリ”の見積もりがわかったら、支店長や見積もりの担当者は現場の人間から厳しく注意されていました。それがなぜ、現場の人間も口をつぐむような会社になってしまったのか」(槙本さん)

 AERA dot.編集部の取材にYHCの親会社であるヤマトホールディングスの広報は「一部で誤った請求があったことは確認しています」と、水増し請求の事実があったことを認めた。しかし、詳細については「現在調査中で、現時点ではお答えできません」と話している。

 水増し請求は、全国的に行われていた可能性もある。槙本さんは、詐欺の疑いで警視庁への刑事告発も検討している。(AERA dot.編集部・西岡千史)