当時はまだまだパソコンは普及していなかった。今では大学生が一人一台パソコンを持つのが当たり前になっている。授業でも使われ、大学教育は大きく変わってきた。

 こうなってきたのは、平成2年に新設された慶應義塾大の湘南藤沢キャンパスの総合政策と環境情報の2学部で、全学生にパソコンを持たせたのがきっかけだ。その後、一家に1台になったのは周知の通りだ。それが今では携帯電話に変わってきているが、元年には携帯電話は普及していなかった。同時にネットビジネスもなかった頃だ。

 その点で見ると、29年は楽天が東京大で12位、早稲田大で20位、慶應義塾大で27位に入っている。ソフトバンクも早稲田大で13位、慶應義塾大で20位だ。採用を減らした企業もあれば、新たな雇用を生み出した企業もあることが分かる。

 京都大トップは日本生命保険で、平成29年には25位に落ちている。平成元年時に人気だった生保、損保も今はそれほど上位には出てこない。また、東京大、京都大では省庁への就職者も多い。省庁も統合、名称変更が進んだが、東京大での人気は変わらない。省庁トップは通商産業省から国土交通省に変わった。

 29年の就職先で4大学すべてのトップ10に入っているのがアクセンチュアで、コンサルティングの会社だ。逆に元年には各大学に出てくるリクルートは分社化され29年には出てこない。慶應義塾大の24位にリクルートキャリアが出てくるだけとなった。

 企業は時代とともに変わる。銀行だけでなく、さまざまな企業の統合が進んだ。分社化して社名が替わったり、倒産した会社もある。業績不振で人気を下げている企業もあれば、職種が今となっては敬遠されているものもある。

 企業30年と言われるが、この4大学すべてのトップ30で、平成元年と29年、両方に同じ社名で出てくるのは野村証券だけだ。トップ大学の就職先は、時代を映す鏡といえそうだ。(大学通信ゼネラルマネージャー・安田賢治)

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【表】東京大の就職先トップ30の変遷 1/2