東京商工リサーチ調べ
東京商工リサーチ調べ

  人手不足が続く雇用環境でも、希望・早期退職者を募る企業は増えている。業績不振からリストラに踏み切る従来型のほか、若手登用を進め年齢構成の是正を図る事例や、早めに不採算事業を見直して筋肉質の体質へ転換を進めたり、新たなビジネスモデル構築に動き出すなど、将来を見据えている企業もある。

【表】おもな上場企業のリストラ募集人数ランキング

 信用調査会社の東京商工リサーチが主な上場企業について調べたところ、実施企業は昨年25社と5年ぶりに前の年を上回った。一昨年は18社だった。情報本部の関雅史課長は、多くは業績不振だが、将来の展開を視野に入れた「ちょっと前向きな」事例が出てきていると指摘し、有効求人倍率が高水準で推移するなど雇用環境の変化も背景にあるとみている。

 上場企業が適時開示に基づき公表した募集状況で、昨年に最多だったのはグループ企業を含むニコンの1000人。同社は、財務基盤が健全なうちに「攻めの構造改革」を断行して次の100年に向けた礎を築くと表明している。広報担当者によると、昨年3月末には1143人が早期退職した。

 次に募集人数が多かったのがスズケンの350人だ。政府が価格の安い後発医薬品の使用を促していることや、スペシャリティ医薬品が拡大するなど医薬品卸売市場を取り巻く環境が変化する中、新たなビジネスモデルの構築に挑戦し、利益体質の強化に取り組むとしている。

 同じく350人を募集したのは、みらかホールディングス。臨床検査業務は医療費抑制などで成長が鈍化しているが、高齢化や新興国市場の台頭、先進医療技術の向上などで新たな成長機会が出てきているとした上で、従来とは異なる能力やスキルが求められており、年齢構成の是正も含めた組織や要員の適正化を図るとしている。

 このほか、ウシオ電機は「コスト構造改革を強力に推進し、筋肉質の経営体質を確立することが喫緊の課題」として100人を募集した。その後、同社は応募者が109人となり、特別損失に約15億円を計上すると発表している。一方、240人を募ったジャパンディスプレイは、主力のスマートフォン向けディスプレイ市場で中国勢の生産能力増強などで競争環境が厳しさを増しているとして、自社の生産能力が過剰になっているため合理化に踏み切ったという。

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有望人材の離職を防ぐための対策も