「数学から離れていた学生が多く、どうしても苦手意識を持っている。そこで、中学、高校の基本的なところから数学を徹底的にマスターさせる。それが警察官採用実績の向上につながったと見ています」

 警察官採用者の多さを、特色としてアピールする大学が増えている。就職課、キャリアセンターも力を入れるようになった。実際、警察官を志望する学生が増えたこともあって、対策コースの拡充、地元警察による説明会などを開催する大学もある。

 その成果と言えるかもしれないが、警察官採用者が前年比で倍以上増えた大学が以下だ(採用者数10人以上)。

 常葉大(24人、8倍)、金沢工業大(13人、4.3倍)千葉工業大(16人、4倍)、広島経済大(12人、3倍)、京都橘大(16人、2.7倍)、駿河台大(29人、2.2倍)、愛媛大(14人、2倍)、愛知淑徳大(14人、2倍)、茨城キリスト教大(10人、2倍)、東京福祉大(10人、2倍)。

 とくに伸びが顕著な常葉大(静岡県)は、地元の県警と交流を深めている。静岡県警本部長を講師に迎えたときの特別講義について、大学はウェブサイトでこう紹介している。

「まず警察の職務概要を概説し、静岡県内の犯罪情勢を説明しました。また、DNA鑑定の精度など犯罪捜査の課題や、女性警察官の活躍、暴力団対策の現状などを丁寧に解説していただきました」

 また、常葉大ソフトボール部と静岡県警察ソフトボールチームで試合が行われたときの模様も伝えている。

「試合後は、A班B班に分かれ白バイ隊員の訓練の見学、足跡調査の鑑定を体験するとともに、仕事内容の一部について説明を受けました。学生にとって、警察業務の実際的な知識や技術・技能に触れたことは、進路を選択決定するうえでの有用な体験となったようです」

 警察官に強い大学はこれからいくつも現れるだろう。その先鞭をつけたのが、日本文化大といえる。だが、大学は「警察官予備校」と呼ばれるのを好まないはずだ。一般教養を身につけ、専門科目を学ぶ。そこで得られた知見をもとに警察官になる。これが理想的な形だと、警察官採用上位大学の進路支援担当者は異口同音に言う。

 優秀な警察官になるためには、大学でどれだけすばらしい教育を受けたかにかかってくる──。大学が警察からそう評価されるようであってほしい。(教育ジャーナリスト・小林哲夫

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警察官採用者数ランキング1~15位は?