――アリーナツアーで50万人を動員するなど、ライブも忙しい時期ですね。ライブで思い出に残っていることはありますか。

 実は私は2000年ごろまでしかライブを一緒に回っていません。私自身も子どもを2人育てながら働いていて、1人目のときは東京・大阪・名古屋、ほか10カ所ぐらいのライブを回っていました。2人目を産んだときには、彼女は全国で何十公演もやるようになっていて、2人を育てながらライブを回るのは厳しくなってきていました。これは女性が働きながら子育てをして生きていくうえで、避けては通れない悩みですけれど……。

 そんなときに彼女が「明海さんはもうライブツアーを回らなくていいですよ」って声をかけてくれました。アシスタント2年目の子が育ってきていたので「その子で頑張ってみましょう」って。そして「いつでもどこでも遊びに来てくださいね」って言ってくれました。人として深い人で、「来られないならもういいです」っていうことは一切なく、みんなでうまくやりましょうと考える人なんです。

――新しい人にも任せられる懐の深さがあるんですね。

 本人が強いから、ちょっとしたことで揺らがないんですよね。私のアシスタントから独り立ちしていった子たちと3、4人で奈美恵ちゃんのヘアメイクをほとんどやらせてもらってきましたが、彼女たちが育っていったのは本当に奈美恵ちゃんのおかげなんですよ。初めての人に顔を触らせるのって、怖いじゃないですか。メイクはお習字と同じで、同じお手本を見て描いたところで手が違うと全部違うものが出来上がるもの。どんな仕上がりになるのか不安があって当然だと思う。でも彼女は、どうしても私の都合が悪いときに「あの子にやってもらいましょうよ」ってサラッと言うんですよ。「不安じゃないの?」って聞くと、「だって明海さんのメイクをずっと見てきたんだから、変になるわけないじゃないですか」って。そういうところが本当にカッコイイんです。

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引退後「あと1年楽しみましょ」の真意