というのも、日本のように国民皆保険ではなく、民間の医療保険に加入するしかないからだ。そんな現状を打開すべく、オバマ前大統領の政権下でオバマケアという医療保険制度が生まれたのだが、トランプ大統領はその見直しを選挙公約に掲げて当選したものだから、大統領就任後の現在もオバマケアの存続については議論を呼んでいる。

 ともかく、ホームレスだからってタバコや食料でごまかせると思うなよ!と言われた気がした(彼の態度から、そういう意味ではないのはわかっているが)。おかげで、ホームレス問題からアメリカの今が見えてきたように思う。そして、強調しておきたいのは、健康保険の問題は日本とて他人事ではないということ。現状のシステムがいつまで維持されるのか、改変はあるのか、そういったことに意識を向ける必要はあるからだ。

 次回は、また別のハワイのホームレスから見えてくるアメリカの闇に迫ってみようと思う。

(文/ジャーナリスト・丸山ゴンザレス、イラスト/majocco)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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