子どものひじの状態を確認する古島弘三医師
子どものひじの状態を確認する古島弘三医師

 ダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平(エンゼルス)、前田健太(ツインズ)とメジャーで活躍する投手たちが受けたトミー・ジョン手術。メジャー、NPBだけなくアマチュア球界でも手術を受ける症例は少なくない。肘にメスを入れることは、成長期の子供たちとプロで実績を積み重ねた選手たちでは意味合いが全く違ってくる。

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 慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師は上肢スポーツ障害の専門医で、プロアマ合わせて700件以上のトミー・ジョン手術を執刀してきた。今回のインタビューで、投げ込みのリスク、成長期の子供たちを守るための新たなルール案、アマチュア球界の指導者に知ってもらいたいことなどを伺った。

――古島先生のもとには、プロアマ問わず多くの選手が受診に訪れます。

肩の手術はほとんどなく、大半がひじの痛みです。年間で野球肘障害の新患の外来が600、700人来ますが、小学生は2~3割、中高校生が5~6割、大学生が1~2割と大半をアマチュア選手が占めます。トミー・ジョン手術の件数は保存治療の成績もよくなり年々減ってきて、今は年間20~30例ぐらい。2007、08年は年間100例近くでしたが、野球障害の啓発活動、講演活動や、SNSを通じてアマチュア指導者の方々の理解が深まっている影響が大きいと感じます。投球動作の改善に力を入れる考えが浸透し、15年前に比べて手術する件数が減っています。

――高校、大学で手術を受ける選手の共通点はありますか?

プロを目指す選手が多いです。本人にヒアリングして、今回初めて痛み出したという場合は投球フォームを見直そうとか、その選手の背景を聴取して手術が必要かどうか決めます。また、高校、大学で手術を受ける選手は、小中学生の時に肘を痛めているケースが非常に多い。小学校の時に投げすぎて肘を痛めるとその後に響きます。非常にまれですが、僕が関わった中では、小学生でトミー・ジョン手術を受けたケースも過去にありました。その子は身長175センチもあり体格に恵まれているので、試合に投げれば勝つわけですよ。指導者とすれば頼りになるのでずっと投げさせる。その結果、肘が悲鳴を上げてしまった。

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