池江璃花子
池江璃花子

「世界選手権では、50mバタフライをしっかりと頑張りたい」

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 池江璃花子(横浜ゴム/ルネサンス)は、やはり生粋のアスリートだった。自分の状態、世界の状況、ターゲットとする大会までのスケジュール……。その全てをしっかりと把握し、自分がやるべきこと、自分が目指すべき目標の設定の仕方を良く知っている。

 4月の日本選手権で、池江は50m、100mの自由形とバタフライの4種目を制し、『あの強い池江が帰ってきた!』と話題となった。盛り上がる周囲とは反対に、日本選手権を振り返って池江から発せられる言葉は、もちろん喜びに満ちあふれたものであったが、冷静だった。

「派遣標準記録が切れた種目もありますが、まだ世界と戦えるようなものではないですし、決して満足できる結果でもなく、改善点もたくさんありました。今、世界と戦えるのか、と言われたら、自身を持って『はい』とは言えないですね」

 確かに、池江の記録だけを見れば50m、100mの自由形、100mのバタフライは、現状では世界で“戦う”ことは難しいのが現実だ。それほど、池江が療養していた期間も含めた4年間で、世界は進化してしまった。4年前の池江璃花子に戻すだけでは、戦えない。池江もその先に進化しなければ、世界と勝負することは難しい。

 池江はそれをしっかりと冷静に理解しているし、だから悲観することもない。まずは自分にできることをひとつずつ。そうした努力を積み重ねていけば、必ず自分が目指す場所に辿り着ける。

 だから、その一歩としてまずは非五輪種目であるが、50mバタフライに注力することを決めた。現状の世界ランキングでも3番手につけているこの種目であれば、現実的に決勝に進み、メダル争いという貴重な経験を積める可能性が最も高い。

 目標が明確に定まると、池江は強い。5月の久しぶりの海外遠征となった、フランス、バルセロナ、モナコを回るヨーロッパグランプリでは、フランス大会では50mバタフライで3位、バルセロナ大会では2位を獲得。トーナメント式で行われたモナコ大会では準決勝で3番手という結果を残し、着実に歩みを進めていることを結果で示してくれた。

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徐々に埋めたい“世界との差”