市原隼人
市原隼人

 木村拓哉主演「風間公親-教場0-」(フジテレビ系)の第1話で犯人役を演じ話題となった市原隼人(36)。鍛え上げられた肉体は健在だが、そこに繊細な演技が加わり、役者としての幅が広がった印象だ。今秋放送の台湾ドラマ「商魂 TRADE WAR」への出演も発表され、これまで以上に勢いに乗っている。

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「『教場』では体力がなさすぎて警察学校を中退した犯人を演じたことから、視聴者からはSNSで『お前、肉体派すぎるやろ! ありえない』などのツッコミもありました。一方で、ドラマでは物静かでありながら、犯人独特の違和感を醸し出し、場の空気がどんどん不穏になっていく演技に見入ってしまった視聴者も多かったでしょう。まさに“怪演”という感じで、市原さんの底力を見たような気がします」(テレビ情報誌の編集者)

 市原は、岩井俊二監督作「リリイ・シュシュのすべて」(2001年)で繊細な少年役を演じ、主演デビューを飾りました。それ以来、主演ドラマ「WATER BOYS2」(04年、フジテレビ系)では男子シンクロ部員、「ROOKIES」(08年、TBS系)では元ヤンキーの球児など、さまざまな役柄を演じてきた。

「『ROOKIES』で当たり役を得てからは、肉体派の熱血キャラのイメージが強くなった市原さんですが、ここ数年は個性的な役柄にもチャレンジしています。市原さんは30代半ばにしてすでに20年以上のキャリアがあり、かつ常に第一線で活躍してきた。同世代の俳優の中では一歩抜きん出た存在といえるでしょう」(同)

 20代後半から容姿が渋めになり、演じる役柄も個性的なものが増えてきた市原。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22年、NHK)では幕府の宿老の一人で“常にしっとりしている”八田知家を、ドラマ「正直不動産」(22年、NHK)では主人公のライバルで、優秀だがうさんくさい不動産営業マンを、劇場版にもなった「おいしい給食」(19年~、BS12)では給食を偏愛する“給食絶対主義者”の教師を演じている。いずれも演技力が必要とされるキャラクターを見事に演じ分けている。

「いわゆる“肉体派イケオジ枠”は、阿部寛、西島秀俊、伊藤英明らの寡占状態が続いています。市原も20代前半の雰囲気のまま年を重ねていたら、いずれ彼らの“分厚い筋肉の壁”に道を阻まれていたかもしれません。その意味では、いわゆるイケメン俳優の道を捨て、クセの強い“怪優”路線にかじを切ったのは大正解だと思います」(芸能ライター)

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雛里美和

雛里美和

ライター。新宿・十二社生まれの氷河期世代。語学系出版社から邦ロックシーンを牽引するライブエージェント(イベンター)を経て、独立。教育からエンタメまで幅広い分野で活動する。

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