ケルベロスで「捕獲」される佐野社長(ツイッターの動画から)
ケルベロスで「捕獲」される佐野社長(ツイッターの動画から)

 特殊な形をした「さすまた」などを振るう女性たちが、「不審者」の成人男性をあっさりと捕らえてひきずり倒し、行動不能にしてしまう。新しい防犯製品を開発した会社の社長自らが体を張って、その威力を紹介した動画だが、その見事な「やられっぷり」が話題になった。この強力な防犯製品は、不審者などを取り押さえるために、全国の学校や商業施設などに配備されている「さすまた」の弱点を克服すべく、栃木県の企業が県警の依頼を受けて開発したものだ。

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 黒く長いバンドが先端に取り付けられた「さすまた」を、女性が力を込めて男性に突きつけた。すると、外れたバンドが男性の上半身に一瞬で巻き付き、両腕の自由を奪われた男性はそのまま押し倒されてしまった。畳の上に転がされた男性はもがくものの、バンドをはずすことができない。

捕獲される社長が注目されたツイッターの投稿
捕獲される社長が注目されたツイッターの投稿


 ツイッターなどで公開している動画で紹介されているこのバンドは、栃木県真岡市で自動車部品などの製造を手掛ける「佐野機工」が開発した新型の防犯製品「ケルベロス」だ。

「ケルベロス」を紹介した佐野機工の動画に登場する「不審者」役の男性は、同社の佐野仗侊(たけみつ)社長。捕獲する側の女性は、同社の従業員たちだ。社長自らが体を張った動画は、「社長撃退」「社長へのうさばらし」などと面白がられ、大きな反響を呼んだ。この「ケルベロス」を使って、武術家らを行動不能にしてしまう様子が撮影されたYouTube動画までもが登場した。

■さすまたの「弱点」

 佐野機工が「ケルベロス」などの防犯製品の開発を始めたきっかけは2011年春、栃木県警からの「打診」だった。県内で試作品を作ってくれそうな企業を探していた県警が、自動車部品などの精密な製品を長年製造してきた佐野機工を知ったのだという。

 しかし、当時の同社に防犯関連の製品を手掛けた経験はなく、佐野社長は「とにかくびっくりしまして。とりあえず、お話だけうかがいに行きますという回答しかできませんでした」と振り返る。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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普及した「さすまた」の弱点